北壁は朝が最も美しいと聞いていたので、夜明け前に起床してみると、幸い今日も雲一つない晴天で、北壁が徐々に明るみ始めていた。さっそくカメラと三脚を持って寺から下り、眺めの良い場所でシャッターチャンスを待っていると、まもなく朝日が昇り、北壁の輝きが増してきた。もう11月ということで、北壁全体に陽が差すわけではないが、やはり神々しい眺めに違いない。改めてその威容に感嘆してしまった。

北壁の朝焼け [→
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さて、今日はコルラ最大の難所、ドルマ・ラ(卓瑪拉山口:5630m)を越えなければならない。ガイドとカナダ人はそそくさと出かけてしまうが、私はもう少し北壁を眺めていたかったので、少し遅れて日本人カップルとともに出発した。

北壁を横目にスタート!
この辺りからは完全に雪が積もっているため、最初は道がわかりづらくて苦労したが、何とか本道を発見して登り始める。しかし、標高5000m以上では地上の半分しか酸素がないので、少し登るだけでも息が切れてしまう…無理をしては絶対にいけないので、遠ざかるカイラス北壁を振り返りながら、ゆっくりと、しかし確実に進んでいった。

シワツェルより

迫力の山容だ
シワツェル(天葬台)まで登ると、周囲に巡礼者が残した古着や髪の毛があって気味悪いが、ここからは多少傾斜が緩くなり、カイラスから遠ざかるように歩いていく。ここでも沢は完全に凍りついていて、周囲は凍てつくような情景だ。先人たちの踏み跡を頼りに、雪道をたどると、ついに右手に、峠への道が見えてきた。

凍りついた沢

北壁が遠ざかる
ここから、再びきつい登りが始まる。ゆっくり歩いているつもりなのに、早くも息切れ気味だ。時々休みながら、少しずつ歩を進めると、途中でカナダ人の残したメッセージが見られるようになった。「頑張れ」「もうすぐだ」「標高○○m」などと書かれているのだ。それに励まされながら、苦痛に耐えつつ登っていった。
しばらくで日本人カップルは遅れていったので、単独で峠に向かうようになる。登っては休み、登っては休みと繰り返していくと、ついに傾斜が緩み、前方に峠が見えるようになった。タルチョもはっきり見えるので、もうすぐだ。ここまで来ればかえって力が湧くというもので、最後は駆けるようにして峠に到達! 待ち構えていたガイドとカナダ人と抱き合い、お互いの健闘を称え合った。
峠には無数のタルチョがはためいていて、聖なる岩には多くのルンタや金などが貼り付けてあり、ここが巡礼路であると再認識する。そして、まもなく日本人カップルも追いついてきて、皆でまた感動を分かち合った。

ドルマ・ラ
少々休んだら下り始めるが、さすがに登りとは比べ物にならない早さで進むことができる。しばらくで見えてきたゴーリクンド(見托吉錯)は、完全に凍り付いていて真っ白だ。さらに一気に駆け下り、ミラレパの足跡で小休止。そして、ここから一下りして、あっという間にラム・チュの川原に降り立った。

ゴーリクンド

ラム・チュに沿って下る
ここからは、川の左岸(東岸)に沿って下っていく。しばらくするとカイラスの東面が見えるが、これまでの山容と比べると迫力に欠ける…峠以降はあまり見所がないと聞いていたので、止むを得ないところだ。

カイラス東面を遠望
ただ、個人的にはもっと周囲の景色を楽しみながら歩きたかったのに、他の人たちはそそくさと歩いていくものだから、余計面白くない。途中で川を横断してからもハイペースは続き、かなり歩かされて疲れてしまった。

淡々と下っていくが…
それでも、夕方前には無事、今日宿泊予定のズトゥプク・ゴンパ(尊最普寺)に到着した。ところが、寺には留守番が1人しかおらず、食事もカップ麺しかないらしい。ならば、いっそダルチェンまで歩いてしまおう、と決まったが、気がつけばもう日の入りまで2時間しかない(ガイドはまだ3時間以上あると言っているが、一昨日ちゃんと時間を確認していたのだ)。そこで、他の人たちが休憩している間にさっさと出立し、競歩並みのスピードで駆け抜けていった。
ゾン・チュ(門曲)沿いのアップダウンをこなしながら1時間ほど歩き、ついにメンダルカルボまでやって来ると、正面にはナムナニが再び見られるようになった。しかし、ダルチェンまではさらに1時間ほどあるので、休む間もなく駆けてゆき、どうにか日没前に宿に帰着。他の人たちも、日没後まもなく帰ってきて、予定より1日早くコルラを終えることができた。夜、外に出ると満点の星空が広がっていて、巡礼達成を祝ってくれているかのようであった。

ナムナニを望む