さて、無事マラウィに入国したのは良いものの、もう午後6時を回り、辺りはすっかり暗くなっていた。ここには泊まれそうもないので、とりあえず南下するミニバスを探さなければならない。
すると、ちょうどカロンガ(Karonga)行が出るところであった。が、アメリカ人が乗り合いタクシーに乗りたいと言い出したので交渉。やや高かったものの、3人なら快適だろうと、結局タクシーを利用することにした。
しかし、ミニバスが出発した後、地元の3人が乗り込んできて、6人で出発することに…約束と違うと言っても、運転手は意に介さず、だったら乗らなくて良いと言う始末だ。これでは粘っても無駄なので、やむなく狭い乗用車に、前2人、後ろ4人を詰め込んで発車したが、もう苦しくて仕方がない…ただただ我慢するしかなかった。
こうして1時間の苦行に耐えて、カロンガにやって来たら、その足でMufwa Lakeshore Lodgeに送ってもらいチェックイン。さっそく蒸し暑くて閉口するが、部屋には蚊帳もあるので一安心だ。長い移動で疲れていたので、軽く食事を取ったら睡魔に襲われた。
ところが、ここは湖畔近くだけあって、蚊の数が半端ではない…気がつくと、蚊帳の周りを多くの蚊が舞っていて、どこかに穴が開いているのか、さっそく数箇所刺されてしまった。ここは紛れもなくマラリアの発生地域で、特にマラウィは要注意だと聞いていたので、早くも顔面蒼白だ。あまりに気がかりなので、その後8匹は退治したものの、まだ数匹飛んでおり、朝方まで眠れぬ時を過ごしてしまった。
さらに翌朝、疲れ切った状態でシャワーを浴びようとすると、瞬く間に20~30匹の蚊が飛び立つではないか! これはシャレにならない…今までマラリアの予防薬は飲んでいなかったが、ここに至って服用を決意したのであった。
ともあれ、発症するとしても1~2週間かかるので、ひとまず旅を続けるとしよう。ここからはマラウィ有数の観光地、ンカタ・ベイ(Nkhata Bay)を目指すが、そのためにはカロンガの街に出ないといけないので、自転車タクシーを呼びつけ出発(私の荷物があまりに重いもので、ペダルをこぐのが辛そうだ)。すると、まもなく銀行のATMを発見! 国境で若干闇両替したとはいえ、早くも底をつきそうだったので、これはラッキーだ。ちょっと止まってもらい、首尾よく現地通貨を引き出すことができた。
カロンガからはムズズ(Mzuzu)行のミニバスがあるので、これに乗車する。ちょうど1台出た後で待たされるも、席が埋まったら発車…なのだが、ミニバンに20人以上詰め込むので、暑いうえに狭苦しい。料金も決して安くないから、まさに三重苦だ。
それでも、やがて湖畔を走るようになると、マラウィ湖の美しい景観が望めるようになってきた。これは大地溝帯の溝にできた湖だが、アフリカ第3の大きさを誇るだけあって、見渡す限り広がっている。また、周囲の家々は素朴な造りで、なかなか味がある(江戸時代の日本のよう?)。
チティンバ(Chitimba)を過ぎると、道は湖畔を離れて高原を走るようになった。ところが、先ほどまで晴れていたのに、進むにつれて雲が厚くなって、ムズズの手前でついに豪雨に…この時期、南部アフリカは雨季の末期なので止むを得ないが、これではバスを乗り継げない。仕方なく屋根下に逃げ込み、雨雲が通り過ぎるのを待った。
すると、30分ほどでほぼ止んだので、ンカタ・ベイ行のミニバスへ。ここまで来ればもう1時間ほどだが、昼間のせいか、なかなか人が集まらず、結局1時間以上経ってようやく出発することができた(アフリカ・バスのシステムは、人気路線では合理的だと思うが、ローカル線だといつ出発できるかわからず困る…)。
こうして、昼下がりにはンカタ・ベイに到達。さすがに観光地だけあって賑わっているが、考えてみると、今日はイースターの休日(3連休の中日)なのだ。予約もせずに来てしまったが、宿は空いているだろうか…
すると、さっそく客引きがやって来て、他は一杯だから自分のところに泊まれと言い出した。そうか、ならば最低でも1つは空きがあるようだ。これで一安心なので、本命の宿に足を向けるとしよう。
ンカタ・ベイの場合、目ぼしい宿は南の丘にあるので、街中を抜けて登っていく。ちょっとの金をケチったばかりに、皆汗だくになって歩く羽目となったが、いざ目的のMayoka Villageにやって来ると、今夜は満室とのこと。これはまずい…
と、ここで学生が隣りのButterfly Lodgeに出向き、2室の空きを確認してくれた。きっと他の宿は期待できないし、これ以上歩く気力もないので確保。ただ、どちらもダブルベッドなので、どうしたものか…皆遠慮して大丈夫だというが、何か間違いがあってもいけない。幸い、私はテントを持っているし、1部屋は広めだった(テントも室内に張れる)ので、私と学生で一緒に泊まることにした。
実は、テントで泊まるメリットもあった。備え付けの蚊帳だと、穴が開いている場合があり、マラリアにかかりかねないのだ。テント内なら、その心配もないので、安心して眠ることができる。マラリアには罹りたくないので、それだけでも大助かりだ(幸い、今のところ予防薬による副作用はないし、発症の兆候もない)。

ンカタ・ベイからのマラウィ湖
さて、これにて一件落着なので、荷物を置いて受付に向かうが、ここからの眺めがまた素晴らしい。マラウィ湖が目を見張る美しさで広がっており、まるで熱帯の海岸にいるようである。マラウィは小国の割に評判の良いところだが、この景色を見ただけでも大いに納得してしまった。
ただ、ここは同時にドラッグの在り処としても知られているらしい。例の学生はドラッグ好きで、しょっちゅうオランダに行っては合法的に吸い、とある国では警察に踏み込まれて逃げた経験もあるそうだが、そんな彼にとっては天国のようなところ(もちろん、建前では違法とされている)。この夜も、まずい食事を終えて部屋に帰ると、彼はしばらく後に戻ってきて、怪しい笑みを浮かべていた。何があったかは明らかだ。