パイネ国立公園は、アルゼンチンのロス・グラシアレスとともに、南部パタゴニアの目玉である。氷河によって削られた花崗岩の岩峰群をはじめ、巨大な氷河、点在する氷河湖、南極ブナ(Northofagus)の森など、「地の果て」にふさわしい荒々しい自然が広がっており、特にトレッキングで周遊するのが人気となっている。
その場合、一般的には、三本塔で有名なトーレス・デル・パイネ(Torres del Paine)、岩峰に囲まれたフランセス谷(Valle del Francés)、そして長大なグレイ氷河(Glaciar Grey)の3箇所が見所とされ、これらを繋いで歩く「W」は、バックパッカーの間で人気を博しているという(文字通り、W字に歩く)。が、どうせここまで来たら、Wに留まらず、パイネ山群(Cordillera Paine)を一周するサーキットを歩きたい。こちらは(サイド・トリップも含めると)全長150kmにも及ぶが、今回は10日間の日程を確保したので、不可能ではない。天候次第ではあるが、挑戦する覚悟であった。
さて、パイネ行のバスは7時に出発し、1時間あまり先のセロ・カスティージョ(Cerro Castillo)で小休止。さらに走ると、サルミエント・デ・ガンボア湖(Lago Sarmiento de Gamboa)が左に見えて、その先にパイネ山群が現れた。雲はかかっているものの、なかなかに美しい眺めだ。ここでフォト・ストップになったので、車外に出て手短に撮影を行った。

湖越しにパイネ山群登場
その先で左折するとまもなく、正面にはアマルガ湖(Laguna Amarga)が見えてくる。ここからもパイネの山々が美しいが、特にアルミランテ・ニエト山(Monte Almirante Nieto:2668m)が大きく印象的だ。近くにグアナコ(Guanaco)がいたので、この湖畔でも小休止となったが、個人的には早く公園内に入りたい…
この湖を抜けたところが入園口なので、ここで下車して手続きを済ます。ガイドブックによると、単独でのトレッキングは認められていないと書かれていたので緊張したが、滞在期間等を申告し、お金を払うとあっさりクリア。特に問題なく入園を許可され、一安心であった(でも、本当は駄目らしい)。
そして、ここで大半の乗客は下車し、ある者は歩き始め、ある者はミニバスに乗って消えていく。ほとんどの観光客は、この先のHostería Las Torresからトーレス・デル・パイネを目指すか、Wコースを歩くか、あるいは一周サーキットを歩き始めるのだ。が、大勢に流されるのは流儀でないので、私はもう少し先までバスで移動する(正直、混み合う中を歩きたくない)。
バスは若干名の乗客を乗せて走り出すが、ここからはいよいよパイネ山群が迫ってきて、とりわけ「パイネの角」ことクエルノス・デル・パイネ(Cuernos del Paine)がごつい山容をさらけ出している。途中の展望地からは、ノルデンフェールド湖(Lago Nordenskjöld)越しに、パイネ・グランデ山(Cerro Paine Grande:3050m)とともに望むことができる。ここでも停まってくれたので、存分にその景色を眺めさせてもらった。

パイネ・グランデ(左)とクエルノス・デル・パイネ(右)

グアナコの群れ
再び走り始めると、グアナコの群れが現れたところで停車。なんと、1台のバスが路肩を外れて身動き取れなくなっているではないか。運転手は救出方法などを思案しているが、私はその間にグアナコと戯れて遊んでいた。
そして、バスはまもなく右折し、ペオエ湖(Lago Pehoé)畔のプデート(Pudeto)にやって来た。ここからは、トレッキングの起点となるペオエ(Pehoé)までカタマランが出ているので、私もここで下車し、船の登場を待った。
40分ほど待ったところで船が現れ、12時発でペオエ湖を横断していく。この湖はいかにも氷河湖といった色合いで美しいが、いかんせんスピードが速く、のんびり船旅を楽しむ感じではない。それでも、湖越しに見るパイネ・グランデ山とクエルノス・デル・パイネは美しく、見応えのある景観であった。

ペオエ湖を横断中
こうして30分足らずでペオエに到着すると、帰路の乗客で混み合う中をさっさと下船し、すぐに歩き始めた。今日は2時間ほど先のイタリアーノ・キャンプ場(Campamento Italiano)に行くだけなので、しごく気楽なものだが、とにかく喧騒に巻き込まれたくなかったのである。
トレイルはしばらくペオエ湖畔を緩やかに登っていくが、さすがに「風の大地」と言われるだけあって、強風で斜めに生長した木が見られる。この丘を登りきると、眼前にはスコッツバーグ湖(Lago Skottsberg)とクエルノス・デル・パイネの展望が開けてきた。立ち上がりから出血大サービス(?)である。

スコッツバーグ湖越しの眺め
ここからはパイネ・グランデの山裾を歩いていくが、次第にクエルノスが頭上に聳えてくる。アップダウンをこなしながら進むと、やがて吊り橋でフランセス川(Río del Francés)を渡り、1時間半ほどでめでたくキャンプ場に到着した。
キャンプ場はまだ余裕があるので、適当な場所にテントを立てて準備完了。後は淡々と過ごすが、夜になってネズミがウロチョロして、少々うるさくなった。でも、初日はまずまずの天気で終われたので、幸先の良いスタートだったと言えよう。

クエルノスの岩峰が迫る