北米への旅は、実際の旅に先立つ4ヵ月半前、2003年の年明けとともに始まった。と言うのは、ガイドブックを眺めていたところ、アメリカ、カナダとも、観光シーズンとなる夏は大変混み合うため、かなり前から準備をしておかないと、ツアーも宿も満足に確保できない(場合によっては半年前でも難しい!)とあったからだ。
そこで、NZへの出発を目前に控えた年始のある日、北米専門の旅行会社を直撃。旅行の予定を伝えて、手配をお願いする。今回は5月中旬から9月中旬までの4ヵ月、まずアメリカ西部の主要国立公園を巡ったら、盛夏のカナディアン・ロッキー(Canadian Rokkies)でハイキング三昧の日々を過ごし、最後に秋のアラスカ(Alaska)でデナリ(Denali)とオーロラ(Aurora borealis / Northern Lights)を堪能しようという計画である。手配を進める以上、1日単位で予定を決めなければならないが、大まかな予定を記し、航空券を確保したところで時間切れ、NZに旅立つ日を迎えてしまい、後は電子メールでやり取りしながら詰めることにした。
NZ渡航後は、できるだけマメにメールをチェックするよう心がけ、詳細を詰めていく。どこに何日かけるかは、ガイドブックの情報と全体のバランスを考慮し、天候や不測の事態にも備えて、若干の余裕を持たせて設定。それに従って重要な予約から手配を進めてもらうと、幸い、国立公園の宿、交通機関、レンタカー(アメリカでは車がないと動けない!)などを首尾よく確保することができた。まだ先着順のキャンプ場、カナダのユースホステル、アラスカの宿やツアーなど、いくつか残っていたものの、これでもう9割方押さえることができたので、後は4月末の帰国後でも間に合うだろうと確信し、安心してオセアニアの旅を満喫したのであった。
こうして意気揚々と凱旋し、次なる北米編の内容を確認。ところが、この段になって旅行会社から連絡があり、取れていたはずのグランドキャニオン(Grand Canyon)の予約が、トラブルと勘違いで、一部確保できていないと言ってきた。そんなバカな…急ぎ確認してみるが、ハバスパイ(Havasupai)のキャンプ場、谷底のファントム・ランチ(Phantom Ranch)ともに既に一杯で、1ヵ月先まで空きがないという。どちらも非常に楽しみにしていたのに…仕方なく代替手段を考えざるを得なくなってしまった。
しかも、よくよくチェックしてみると、予約を入れた宿はほぼ全て、1泊1万円以上する高級ホテルばかりだ。貧乏旅行の身としては、とても耐えられるものではない。幸いキャンセル料はまだタダなので、片っ端から安宿かキャンプ場に切り換えていく(北米で幸運だったのは、今やほとんどのところがインターネット経由ですぐに予約を入れられること)。カナダのユースホステルや、アラスカのキャンプ場の手配などもあわせて進め、こちらは見事に確保。一部不満は残るものの、なんとか挽回することができた。
ところが、今度は具体的な旅程を組む段になって、「失敗」に気づかされてしまった。先に記したように、はじめは日本のガイドブックを参考に日程を組み立てていったのだが、さらに現地で何ができるかと、欧米のバックパッカーご用達のLonely PlanetのWalking Guidesシリーズに目を通したところ、予想をはるかに超える見所があると知ってしまったのだ。とはいえ、もはや後の祭り、ここにきて日程を大幅に組みかえることなどできっこない。こうなったら仕方がないので、決められた予定の中でいかに中身を濃くしていくか、という点に注力して追い込みを図った。
実のところ、北米編は余裕だろうと思っていた。アメリカの都市は治安が悪いと聞いていたが、都市にはあまり寄るつもりはないし、所詮は先進国である。言葉は英語で問題ないし、観光のインフラも整っている(車さえあれば)。費用がかさむのを覚悟すれば、それほど問題になる要因は見当たらなかった。
しかし、ここに来て状況は変わりつつある。ブッシュ政権になって以降のアメリカは、世界を敵に回して勝手な振る舞いを続け、ついに9.11のテロを招いてしまった。おかげでアメリカ国内は厳戒態勢となったが、旅行者にとって厄介なのは、入国審査や搭乗手続きに異様に時間がかかるようになったこと。おまけに、直近になってSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行し、アメリカはともかく、カナダではトロント(Toronto)周辺で感染が広がっているという。ここまで来て旅をキャンセルするわけにはいかないので、後は感染が拡大しないことを祈るしかない。
ともあれ、こうして準備万端のつもりが、最後まで慌しくなってしまった。これには、先のオセアニア旅行から2週間しかインターバルがなかったという問題もある。しかし、それを言っても始まらない。全体から見れば、かなり準備が進んでいるのは確かなのだから、後は要所要所で気をつけながら、旅を続けていくだけである。