昨日は霧で何も見えなかったが、この日は朝から快晴で、ドゥードゥ・コシ対岸のクムチェ山群(Khumuche Himal)が綺麗に見えている。新雪をかぶっているので一層美しいが、今日は行けるところまで行くつもりなので、朝食を終えたらさっそくスタートを切った。

クムチェ山群
正面にタムセルク、右手にクムチェ山群を見ながら快適に歩くが、対岸には数日前に歩いたトレイルが延びていて、集落がへばりつくように見えている。あんなところを歩いていたのかと、なんだか不思議な気分だ。コナール(Konar)辺りからはクーンビラが大きくなり、シャンボチェからの眺めとは別物のよう。適度なアップダウンをこなしながら、南下を続けていった。
やがてポルツェ(Phortse)に入ると景色が一層開け、この先に続くイムジャ・コーラ(Imja Khola)が見えてくる。このまま尾根を周り込むようにして歩くが、途中で畑に迷い込んだのはご愛嬌。少し戻って正規の道に復帰し、そこから谷奥に向けて登り始めた。

クーンビラを振り返る
対岸にタンボチェ(Tengboche)を見ながら登っていくと、やがて尾根の先に達し、イムジャ・コーラとともにアマダブラムが厳然と姿を現した。これがなぜ「母の首飾り」という意味かはわからないが、独特の美しい山容である。ここまで来ると、いよいよ「エベレスト街道」に入ってきた気がする。
この先もしばらく緩やかな登りが続いているので、さらに前進を続ける。トレッカーのグループが一度通った以外、道中で人を見かけることはなく静かだが、ここの景色は格別。渓谷越しにアマダブラムが鎮座し、奥にはローツェが見守ってくれている。やがて登りが終了し、前方にはパンボチェ(Pangboche)が見えてきたので、この別天地で小休止し、存分に絶景を眺めさせてもらった。

渓谷越しのローツェとアマダブラム
しばらくのんびりしたら、眼前のパンボチェに向けて下っていく。途中、カンテガとアマダブラムの間からピラミダルな秀峰が覗くが、あれは何という山だろう…不思議に思いつつ進むと、やって来たパンボチェからはアマダブラムが見上げる高さとなり、威厳に満ちた姿を見せている。ここは休憩するには良いところなので、昼食を兼ねてロッジに立ち寄った。

アマダブラムを見上げる

カンテガ
アマダブラムとカンテガを見ながら食事を待っていると、しばらくで欧米人が入ってきて、家の子供たちとともに、ダライ・ラマのビデオを見始めた。シェルパはもともとチベット東部からやって来た民族で、チベット仏教を信仰しているから当然としても、欧米人がこんなところで熱心にビデオを見て、執拗にメモを取っているのは何か奇妙だ。チベット仏教に帰依する人が増えているとは言うが…でも、ダライ・ラマのビデオが平然と見られるだけ、ここは(中国に支配された)チベット自治区よりずっとマシである。
ビデオを見ながら食事を済ませ、集落を抜けていくと、しばらくでタンボチェからの道と合流。ここからはイムジャ・コーラを間近に見ながら遡っていくが、メインルートに入ってきただけあって、それなりに混雑してきた。ほとんどは下山する人たちだが、ガイドやポーター、ヤクのキャラバンも含めて、活気にあふれている。これまで、ナムチェ以降は静かな山行だったので、ちょっと戸惑いながら登っていった。
ショマレ(Shomare)を過ぎるとほぼ平坦になり、オルショ(Orsho)へと続くので、景色を楽しみながらのんびり進む。そして、やや登ってツロ(Tsuro)に到達すると、まもなく分岐が現れた。
通常は、ここで右折してディンボチェ(Dingboche)に向かい、高度順応も兼ねてチュクンに寄ったりするのだが、今回は最後にチュクンを訪れるつもりだし、早くカラパタールに立ちたい(この先、大雪で入れなくなったら困る!)ので、左折して近道を進むことにした。多くの人が下山路として使うだけあって、登る人は見かけないが、気にせず進もう。
ここからジリジリと登っていくと、背後のカンテガとタムセルクの眺めが良くなり、なかなかの展望になってきた。幸い雲も退き始めていて、絵になる光景だ。そこで、ペリチェ峠(Pheriche Pass:4270m)に達したら、強風をものともせずに腰を下ろし、この景色をのんびりと眺めた。

ペリチェ峠より
そして、ここから一下りしてクーンブ・コーラ(Khumbu Khola)を渡ると、まもなくペリチェ(Pheriche)に到着。思ったより閑散とした集落だが、既に夕方間近だし、ここまで来ればもう、明日にはカラパタールにたどり着けるので、Snow Land Lodgeに部屋を取った。

ロブチェを望む
ロッジには当初、客が他にいなかったが、日が暮れたところで欧米人が3名来館。2人はカラパタールから下山してきたところだが、高山病の症状が出て辛そうだ。そしてもう1人は、ここで数日滞在しているが、高山病が一向に改善されないので、諦めて明日下山するという。
そう、4000mを越え、この辺りが高山病の出やすいところだ(そのせいか、診療所もヘリポートもある)。ここで無理をすると取り返しのつかないことになるのだが、幸い私は何の問題もなく、順調そのもの。明日には一気に登ってしまおう!