ヨーロッパ出発前は、この旅で盛り上がれるのか、正直言って不安だった。ところが蓋を開けてみると、事前の予想とは異なり、大苦戦を強いられることとなった。想像以上の混雑で宿の確保が難航し、野宿せざるを得なかったり、逆にガイドブックの情報が古く、動いているはずのものが動いていなかったり…予想を裏切る展開が続いて、違う意味で盛り上がることになってしまった。
異常気象にも苦しめられた。今年のヨーロッパはなかなか天気に恵まれず、各地で何十年ぶりという積雪、冷夏に見舞われたが、個人的にも無理やり雪の中を歩かされたり、停滞を余儀なくされたりと、思うようにはいかなかった。これまで、南北アメリカでは異常気象が味方してくれたが、今回は逆になってしまったわけだ。
また、特に後半は観光シーズンに入ったせいもあり、どこに出かけてもツーリストだらけ。自然の中で静寂を楽しみたかったのに、喧騒の世界ばかりが広がっていた。特にスイスは日本人観光客がうんざりするほど多く、実にひどい有様だった(スイス自体は良い国だと思うけれど…)。ヨーロッパは旅行好きが多い気がしていたが、その本家本物は、意外にも旅行しにくいところだったのである。
この旅を一言で表現するなら「苦難と喧騒」。正直、あまり良いイメージではない。これまでが基本的に順調だったので、少しなめていた嫌いはあるが、自然をメインに動こうとすると意外に大変なのがヨーロッパ。それを今回、痛切に感じる羽目になった。
それでも、全てが無駄だったわけではもちろんない。特に勉強になったのが、環境問題への取り組みだ。
日本では環境税やレジ袋税の導入もままならないというのに、こちらでは意外にも、レジ袋が有料だったり、ペットボトルにデポジットが加算されていて、リサイクルに回すと返金されるシステムを採っている国が多い。物価の高いヨーロッパにあってこれは重要で、できるだけ安く済まそうと、袋を持参したり、高価なペットボトル飲料は購入を控えたりと、自然に環境対策を進めるようになった。この辺りは、日本ももっと学んで良いと思う。
また、自然景観の保護という点でも、やはりヨーロッパは一日の長がある。どこかの国のように、街中にどぎついビルが乱立していたり、山中に土産物屋が並んでいたりすることはなく、景観と調和した建物が要所要所に建っているだけ。だから心乱されることなく、安心して歩くことができる(人が少なければもっと良いのだけれど)。ヨーロッパ各地の田舎巡りをするのも、きっと悪くないだろう。
ヨーロッパは基本的に「人の歴史」だが、その中でも、それなりに環境を守り、それを育んでいこうとしているのがわかる。確かに他の地域のように、見るものを圧倒するような大自然は少ないけれど、美しい自然を楽しむことはできた。特にノルウェーには魅せられたし、TMBを始めとするアルプスの景観も悪くなかった。今回は訪れなかったが、スロベニアやクロアチア辺りも良いらしいし、アイスランドやグリーンランドを探訪するのも面白そうだ(ただし物価が異常に高い)。スペインやエーゲ海なども魅力的で、興味は尽きない。
もちろん費用がかさむので、そう簡単に再訪することはできないが、ヨーロッパは年老いても十分に旅行できるエリアなので、機会があったらまた訪れたいものである。
ともあれ、これでオセアニア、北米、ヨーロッパという先進国への旅は終わった。これら地域は観光のインフラが整い、一見旅はしやすいけれど、旅行者が多くて賑々しく、物価も高いという難点がある。融通がききにくい面もあり(場所によっては、ツアーは数ヵ月前に予約をしないといけない、一人では対応してくれない等)、特に一人旅には辛い面もある。車がないと動きにくい、という点も見過ごせない。
それに比べると、前の南米、次のアジアという途上国への旅は、旅行が大変な面はあるものの、物価は安く、一人旅でも融通がききやすい。文化や民族の多様性から刺激も多く、ハプニングを楽しむゆとりがあれば、こちらの方が断然面白そうだ。一度途上国の旅の魅力を知ってしまうと、どうしても先進国への旅が見劣りしてしまうが、これはもう、仕方のないことなのだろう。
今回のヨーロッパ旅行で辛酸をなめた分、次のアジア旅行ではきっと、ちょっとやそっとの試練も苦痛には感じずに済むに違いない。この経験を生かして、次はさらに心のゆとりを持って臨みたいものである。