アスワンまで来たら、やはりあの有名なアブ・シンベル神殿(Temples of Abu Simbel)に行かぬわけにはいかない。ラメセス2世が威信をかけて造り、今や世界遺産の象徴としても知られる、エジプト観光のハイライトの1つである。これ自体はオプションだったのだが、私も含めて全員が参加した。
だが、この区間はコンボイに従って一斉に移動しなければならないので、アスワン発は早朝4時…昨日に続く早立ちを強いられ、さすがに眠い。出発早々眠りについたのは言うまでもない。
バスは砂漠の中を延々疾走していく。車は他のグループとのシェアで、ほとんどの人は眠っていたが、やがて空が明るみ始め、到着前に太陽が上がってきてしまった。朝焼けの遺跡を撮りたかったのに…7時頃になってようやくアブ・シンベルの街にたどり着くが、遺跡までの道はツアー・バスで渋滞気味。とにかく早く着いてくれと祈るように見守っていた。
まもなく駐車場に到着すると、先客が入口に入り始めようとしていたが、まだそれほどでもない。今入ればチャンス!と思ったのだが、団体行動の常、グループの歩調に合わせなければならない。しかもトイレ(特に女性用)が大混雑で、その人たちを待っている間に続々と団体さんが入場していく。あぁ…
やっとのこと全員揃い、ガイドとともに入場。正面にドームが見えるが、遺跡はそれを回りこんだ裏側にある。私は一人、競歩のごとく急ぎ足で歩き、何人もの人を抜き去って遺跡を目指した。そして、ついに大神殿が視界に入ってきた。おぉ、噂通り、驚異的な遺跡だ。ちょうど先頭グループが講習を終えて中に入るところだったが、まずは静かなうちにご対面できて光栄であった。

アブ・シンベル大神殿
しばらくして他のメンバーやガイドが追いつき、まず遺跡の解説をするか、それともしばしの自由(撮影)時間にするか話し合いがもたれ、結局後者となった。そこで皆大神殿の写真撮影に夢中になるが、こちらは既に多くの人でごった返しており、先ほどより状況は悪化している。一方、隣りの小神殿はまだ誰もおらず、掃除の人が一人寂しく佇んでいた。こうなれば今度は小神殿に出向き、じっくりと撮影に興じた。

アブ・シンベル小神殿

像が並ぶ
大神殿前に戻ると、ガイドが遺跡に関する説明を始め、その後は9時半まで自由行動となった。この頃にはもう大神殿は大混雑で、見るに堪えない状況だったので、ひとまず小神殿の中を拝見する(こちらも混み始めてはいたが、まだマシだった)。美しいレリーフがそこかしこにあり、「小」とはいえ見応えがあった(てっきり写真撮影不可と思っていたが、多くの人が堂々とビデオやカメラで撮影していた)。
ひとしきり見終えると混んできたので、続いて大神殿に向かう。まだ中はかなり混雑しているようなので、まずはラメセス2世の巨像が並ぶ様を見上げるが、間近で見るとさすがにデカイ。よくもまぁ、こんなものを造ろうと考えたものだ。

改めて大神殿

デカイ!
ご存知の方も多いと思うが、この遺跡は、アスワンハイダム(Aswan High Dam)建設による水没を防ぐべく、ユネスコが国際的に寄付を募り、1,000個以上のブロックに分けて60m上の今の位置に移転したものだ。確かに良く見ると、ブロックの割け目が所々に見える。しかし、傍目にはそれを感じさせないほどで、その技術にも感銘を抱かざるを得なかった。
さて、そうこうするうちに中の方も空いてきたので、満を持して入場する。大列柱室に入ると、聳え立つ列柱、そして周りを囲むようにレリーフが描かれている。保存状態の良いものが多く、特に戦闘シーンの描かれたところは印象的だ。さらに奥には前室、そして至聖所があり、レリーフや神像の見所が盛りだくさん。9時を過ぎると人も極端に減ってきたので、時間ギリギリまで使って存分に見て回った。

外のレリーフ

至聖所

大神殿と小神殿
こうして混雑を回避して遺跡を見学することができ、ひとまずは及第点。後は再びのコンボイで一斉に帰途につき、昼過ぎにはアスワンに戻ることができた。
ホテルに戻ると、残りは自由時間ということだったが、オプションとしてフィラエ神殿(Philae Temple)を訪れることも可能と言われていた。ここもユネスコのキャンペーンで水没をまぬがれた遺跡で、アスワン郊外の最大の見所である。私はもちろん参加を表明したが、アブ・シンベルで満足したのか、それとも疲れたのか、関心がないのか、この段になって他の人はもういいと…1人では値段が倍以上になってしまうのだが、こうなったら引けないので、1人かの地に赴くこととなった(他の人たちは結局、ナイルの川岸などでただのんびりと過ごしたらしい)。
ホテルで少々休憩し、3時にタクシーで船着場に向かう。乗り場前には数多くのツアー・バスが並んでいて、大変混雑しているようだ(アブ・シンベルの後にフィラエに寄るのが通常のツアーのパターン)。しかし、この時間になって神殿に行こうという者は誰もいないので、1人でボートをチャーターし、フィラエ島に入る。ここも巨大な塔門や列柱が聳え、多くのレリーフが残されていて興味深い。始めのうちは混んでいたが、時間が経つにつれて人はめっきり減り、じっくりと鑑賞することができた。これなら高い金を払っても来た甲斐があったと言えよう。おまけに島から見るナセル湖(Lake Nasser)の景観も思いのほか美しく、ちょっと得した気分であった。

フィラエ神殿

中のレリーフ

ヒエログリフも鮮明

トラヤヌスのキオスク
こうして1時間ほど散策したら帰途につき、市街に戻っていく。ナイル川沿いに出てみると、ちょうど日没前、川面をフルーカ(Fulucca)が滑るように動くのが見える。明日からは4日間、あの船に乗ってナイル川下りだ。

日没のフルーカ