翌朝、夜明けとともに起床すると、幸いにも青空が覗き、素晴らしい天候になっていた。昨日「偵察」を済ませたことだし、これなら今日1日で、見所を周れそうである。
意気揚々と出立すると、朝7時にもかかわらず、ゲート前は早くも大賑わいだ。ここはまぁ、仕方がないとして、さっそく満員のバスに乗って、溝内に分け入っていった。
昨日の失敗から、おおまかな行動パターンは読み解くことが出来た。多くの人はまず午前中、日則溝を上流から見て回り、昼前後に則査窪溝を巡って、昼過ぎに樹正溝にやって来るようである。ならばそれを逆手に取って、まず原始森林を飛ばし、混み合う前に日則溝を周遊、昼頃樹正溝を周って夕方に則査窪溝と進めば、完全に裏をかけるはずだ。これが成功するかはやってみないとわからないが、昨日よりはうまくいくだろうと、何か確認めいたものを感じていた。
しかし、バスは例によって混み合っていて、誰かが降りてくれないと途中下車は難しい…本当は箭竹海か草海で降りたかったが叶わず、結局また原始森林まで連れていかれてしまった。が、ここまでは想定内。他の人たちがゾロゾロと森に入っていく中、すぐに乗り場に移り、バスは私1人を乗せて下り始めた。
あいにく、下りのバスは草海に停まってくれないので、箭竹海で下車。すると工事関係者が若干いる程度で、観光客は皆無であった。まずは作戦大成功!このまま、混み合う前に日則溝を巡ってしまおう。
昨日は対岸を歩いたので、今日は道路沿いの遊歩道を歩こうとするが、こちらは工事中のため通してもらえず、やむなくまた同じ道を歩くことになった。それでも、誰もいない中を歩くのは快感で、晴天に恵まれたこともあって、湖面はひときわ美しい(あまりに澄んでいるため、周囲の景観を必要以上に反射している)。これぞ九寨溝である。

熊猫海

熊猫海からの眺め
熊猫海の東岸まで来ても、露店の人が暇にしているほどで、実に静かだ。そのまま下り、再び老虎嘴を訪ねてみるが、こちらはあまりに景観を反射していて、昨日の方が写真映りは良かった…でも、五花海と孔雀河道は実に美しく、昨日とは比べ物にならないほどの輝きを放っている。さすがにここまで来ると若干の観光客がいたが、気にするほどではない。絶好の被写体を前に、何枚もの写真を撮ってしまった。

五花海

驚くほどの透明度だ

石灰華の倒木が沈んでいる

孔雀河道

倒木と清水の妙
ここで存分に景色を堪能していると、徐々に人が増えてきたので、今度はバスを使って珍珠灘へ。ここも多少の人がいたが、昨日とは比べようもない少なさである。十分に涼を味わい、滝の下にあるバス乗り場へと移動した。

珍珠灘瀑布
こうして順調に日則溝の観光を終え、続いては諾日朗瀑布に赴く。こちらもまだ混み合ってはおらず、特に滝を一望する展望台(道路のすぐ脇にある)には誰もいなくて爽快だ。幅320mの滝はなかなかの見応えで、一息するにはちょうど良かった。

諾日朗瀑布

犀牛海
そして、昼時を迎えたところで樹正溝に入り、老虎海でバスを降りると、そこには観光客が誰もいなかった。これまた予想的中! せっかくなので、いったん犀牛海に寄り道してから樹正瀑布、公主海を通り、樹正寨に向かうが、本当に観光客が誰一人いないのだ。これほどまでに行動がパターン化されているとは、正直驚きであった。

老虎海

ここも吸い込まれそうな色合い

樹正瀑布

樹正群海を見下ろす
樹正寨から樹正群海を眺めたら、今度は対岸に渡り、遊歩道を下流へ歩いていく。この辺りも見所が目白押しで、樹正群海、臥龍海、火花海、双龍海と、実に美しい湖沼が続いている。湖底に沈む倒木や水草も綺麗に見通せて、この世のものとは思えない世界が広がっている。火花海と双龍海の間道を歩いて車道に出たところで、ようやく観光客を数名発見したが、それにしても職員は暇そうにしていて、これが数時間後には大混雑になるのだから、本当に信じられない。

どこまでも美しい湖沼が続く

樹正寨を望む

臥龍海

双龍海
また元の道に戻り、なおも下っていくと、今度はちらほらと、バックパッカーらしき人を見かけるようになった。なぜか重い荷物を背負って歩いていて、きっとどこかに泊まるつもりなのだろう(あるいはバス代をケチったのだろう)が、はたしてうまくいくのやら…
蘆葦海まで下ると、もはや湖沼というより川のようであったが、そこをのんびりと歩いて盆景灘に到着。ここにはちょうど荷叶寨のバス停もあるので、景色を楽しんだら、今度は再び樹正寨に向かうことにした。

火花海

蘆葦海

盆景灘
この時間ともなるとバスはガラガラで、いきなりバス券のチェックがあって驚いたが、ちゃんと購入していたので問題なし。樹正寨もまだ混み合う手前だったが、徐々に人が増え出しているようなのですぐに対岸に渡り、今度は上流に向けて歩き始めた。
対岸を見ると、ここに来て観光客が続々と現れるようになり、次第に混み始めていた。しかし、こちら側は数名がいる程度で、喧騒とは程遠い。老虎海、犀牛海に沿って歩いていくが、やはり美しいものは美しい。さすがに諾日朗瀑布まで来ると、混雑していてどうしようもなかったが、もう2時を過ぎたところなので、致し方ないだろう。ここは素通りして、諾日朗のビジターセンターに向かった。

老虎海と沈む木々
予想では、長海方面には3時過ぎのバスに乗るのが良いので、それまでは軽食を食べたりして過ごし、3時を廻ったところで満を持して乗車。なかなか人が集まらず、バスの発車が遅れたものの、3時半過ぎに無事長海に到着した。
ここは九寨溝最大の大きさと深さを誇る湖だけあって、これまでとは違って深い色合いになっており、風景もどことなく大陸的である。とりあえず一緒に来た人たちが消えるのを待つが、運が悪いことに、ここで次のバスが登場。やむなく彼らが去るまで待機し、ようやく長海と独臂老人松をセットで被写体に収めることができた。

長海と独臂老人松
この頃にはもう人気が少なくなっていたが、五彩池に下っていくと、こちらはまだ混雑の渦中にあった。それでも、五花池とともに最も美しいと言われるだけあって、コバルトブルーの湖面は形容し難いほどである(底にある石の形や模様までくっきり見える)。しばらくすると団体客が消えて、ほぼ独壇場になったので、5時の最終バスまで、様々な角度から飽きることなく見惚れたのであった。

五彩池

驚異の色彩だ
こうして、2日目は大満足のうちに観光を終えることができた。昨日の失敗が今日の成功をもたらし、もはや思い残すことはない。後は黄龍でも、今日のような好天に恵まれるのを祈るばかりだ。