武陵源の入場システムは妙に先進的で、ICカード+指紋認証でチェックが行なわれる。入場の際には親指の指紋を取られるのだが、そこまでしなくても、と正直思ってしまう(それより入場料を下げて欲しい)。まぁ、これも中国らしいと言えばらしいのだが。
ゲートを通過して中に入っていくが、到着した時間がやや遅かったのか、思ったほど混んではいない。広場に出ると、眼前にはさっそく山水の世界が広がっており、なかなか良い雰囲気だ(曇っているのが残念だけれど)。
そして、ここからは通常、バスに乗ってロープウェイ乗り場に移動し、一気に黄石寨に上り詰めてしまうが、ありきたりの観光では癪なので、ここはあえて裏手から登ってみることにした。
しばらく平坦な道を歩くと、やがてロープウェイの真下を通り、ここから階段状の登りが始まる。この道はかなりマイナーなのか、歩いている観光客はほとんど見当たらず、駕籠(かご)持ちが暇そうにしているぐらいだ。彼らを軽くあしらって、休むことなく一気に登っていった。
すると、1時間ほどで最後の急階段にさしかかり、予想以上に早く登ることができた。ところが、それとともに一気に喧騒の世界に誘われ、猴帥点兵という展望地に着くと、記念撮影に興じる観光客、拡声器で絶叫するガイドと、いきなり面食らってしまう。中国に来てからというもの、観光の度にものすごく疲れるが、これが今後も続くと思うと気が重い…

猴帥点兵
さらに、中国人観光客のマナーの悪さは続く。痰をそこら中に吐くうえ、タバコを吸ってはポイ捨てする。ゴミのポイ捨てもひどいもので、ここでは頻繁にゴミを拾っているので目立たないものの、展望地の脇を見ると、無数のゴミが枝葉に引っかかって、無残な景色になっている。日本人もマナーが良いとは言えないが、それを輪にかけてひどいので、本当に困ったものである。

摘星台より
ところで、黄石寨は台地になっており、崖に沿って3kmほどの周回路が作られているので、試しに歩いてみることにした。
ロープウェイ乗り場周辺は大変な混雑で、そこから六奇閣や摘星台までは騒々しく、雰囲気も何もあったものではない。これではせっかくの展望も台無しである。しかし、有名な五指峰を過ぎると人通りが少なくなり、五瓶峰、前花園など、その先は比較的静かに景色を眺めることができる。特に天橋遺墩は素晴らしい眺めで、団体客ばかりなのが幸いであった(彼らは近いポイントしか見ないので、遠いところは人が少なくなる)。だがそれも、仙女献花まで来ると元に戻ってしまったが。

五指峰

五瓶峰 (右) と周辺の景観

天橋遺墩
こうしてさらっと一周したら、茶店でカップラーメンを買い、お昼にする。だいぶ混み合ってきたので、食事を終えたらさっさと下り始め、南天門、娯楽台と一気に下山。延々と続く階段を闊歩するように下ると、1時間もかからず、あっという間に広場に降り立つことができた。

金鞭渓入口より
この頃になるとだいぶ天気が良くなり、朝方見たよりもずっと美しい景色に見える。そして、ここからは金鞭渓に沿って歩くことにする。この道は水繞四門まで、およそ6km続いているが、川沿いの平坦な道ゆえ、多くの観光客で混雑している。のっけから足止めを食らうほどの混雑で参ってしまった。
それでも、見上げる岩峰群は300m以上の高さがあり、黄石寨のように上から見下ろすのとは違った迫力がある。道沿いには、有名な金鞭岩をはじめ、神鷹護鞭、劈山救母、師徒取経、蝋燭峰などと名づけられた岩峰が続き、見ていて飽きることはない。騒々しさを除けば、素晴らしいところである。

金鞭岩

酔羅漢

神鷹護鞭

師徒取経
しばらくで紫草潭に到達したので、ここで一服する。そして、この先も文星岩、双亀探渓などと見所が続くが、圧巻は千里相会である。金鞭渓の眺めが開けたところから、いくつもの岩峰が林立して見える様は、この世のものとは思えぬものであった。
道はさらに先へと続くが、惰性で跳魚潭まで歩くと、前方の視界が開けて、もうハイライトは終わったかに見えた。このまま観光客の波に飲まれてしまうのは辛いし、水繞四門に出たらどう帰れば良いのかわからなかったので、ここはいったん引き返し、途中で橋を渡って腰子寨に入ることにした。

腰子寨から振り返る

千里相会
このルートは裏道で、同じ道を引き返すのでは能がないと、オプションとして用意していたルートである。ただし、いきなり急な階段登りが続き、川沿いと比べるとはるかに辛い…蒸し蒸しして大変だが、人気が全くないのを励みに、着々と登っていった。
もう夕暮れ間近だったせいもあろうが、ここを歩く人はおらず、実に静かな風情だ。しばらくで背後の展望が開けてきて、岩峰が林立しているのがよくわかる。雰囲気を存分に堪能しながら歩いて、ついに峠に到達。ここには建物もあり、余裕があればサイド・トリップも可能だが、今回は時間がないので止めておこう。そのまま下りに入り、ぐんぐん進んでいった。

腰子寨の景観
下りはやはり楽なもので、楽しみながら駆け下りることができる。展望はほとんど効かないので、休まず一気に下ると、思ったよりも早く広場に戻ることができた(それでも日没間際だったが)。そして、ゲートを出たらミニバスを捕まえて、途中乗換えで夜には武陵源区に帰ることができた。