
ロブソン登場
ロブソン・トレッキング2日目は、朝から曇りがちの天候であったが、今日はどの道5km先のキャンプ場に行く必要があるので、混まないうちに歩き始める。
川沿いの平坦なトレイルを進むと、ほどなくしてロブソン山の北壁が姿を見せ、Marmot Campgroundまで来ると、山上のバーグ・レイク(Berg Lake)と、そこに落ちるバーグ氷河(Berg Glacier)が見えてきた。曇天でくすんでいるのが残念だが、いよいよ核心部に入ってきた。
さらに湖岸を歩けば、30分ほどでBerg Lake Campgroundに到達する。ここはロブソン山周辺を探訪する基地にあたる場所で、私もこれから2泊して、周囲を歩き回る予定だ。これでもう、全重量を担いで登る必要もなくなったので、だいぶ気が楽になった。
キャンプ場では出立の準備をしている人が大半であったが、空きスペースで良い場所を見つけたら、さっさと設営してしまう。今日はこの後、どこぞへ出かけても良かったのだが、天候が優れない上、疲れもたまっていたので、思い切って休みを取ることにした。幸い、そう決断してまもなく雨に降られたので、これは正しい選択だったと言えよう。
昼寝をして起きると、天候は回復に向かっていて、バーグ・レイク越しにロブソン山の姿が見えるようになってきた。周囲ではマーモットが愛嬌を振りまいているが、ちょっと多過ぎる感じ…ともかく、明日こそ天候に恵まれることを祈って眠りにつこうとした。

マーモットが多い

バーグ・レイク越しのロブソン山
そんな中、テントに戻る途中で日本語で話しかけられた。コンタクトレンズを外していたのでよく見えないが、どうやら同い年ぐらいの日本人らしい。この日はWhitehorn Campgroundから上がってきて、そのままスノーバード・パス(Snowbird Pass)まで歩いて氷原を見てきたとのこと。私は明日向かう予定なので、貴重な情報を入手することができた。
翌日はまた曇りがちであったが、昨日よりはマシで、晴れ間も覗いていた。それにしても、8月に入ってからどうも天候が芳しくない。7月後半はあれだけ晴れていたというのに…
日の出とともに朝食を食べたら、まだ静けさ漂う中を歩き始める。ロブソンの山頂は雲に覆われて見えないが、こればっかりは仕方がない。Rearguard Campgroundの先で右に折れ、まずは淡々と平坦な道を進んでいった。
歩くにつれ、前方にロブソン氷河(Robson Glacier)の末端が見えるようになり、次第に眼前に迫ってくる。やがてモレーンを緩やかに登り始めると、氷河を右に見ながら歩くようになり、ロブソン氷河の大きさがわかってくる。ロブソン山頂は相変わらず見えないものの、この氷河は実に雄大だ。

ロブソン氷河
この区間、ガイドブックには「ガラガラのサイドモレーンの道を歩くが、これが長い。雄大な景色の中では見えているのになかなか着かないということがあるが、まさにここはそれで、氷河の大きさを"体感"させられる」と書いてあったので、覚悟して歩を進める。しかし、この覚悟があったせいか、氷河を見ながら歩いていたら、思いのほか早く通過することができてしまった。
こうして氷河を周り込んでいくと、沢の手前で左の斜面をジグザグに登るようになり、やがて広々としたメドウに出た。ここからは沢に沿って歩くが、なぜかやたらとマーモットが多く、そこら中を動き回っている。振り返ればロブソン山と氷河を望め、緩い道のりも快適であった。

メドウからロブソンを振り返る
ここで小休止したら、いよいよ峠に向けての登りとなる。最後はやや急で、岩がちの道になったが、着々と歩んでスノーバード・パスに到達。そしてここから少し下ると、眼前にはリーフ氷原(Reef Icefield)が足もとに広がった。
氷原というのはなかなか人力で近づけるものではないので、これは貴重だ。さらに良い展望を得ようと、雪庇を越えて崖の端まで歩いていく。周辺には誰一人おらず、まさにロッキーの奥座敷にお邪魔したようだ。足もとの大氷原はどこまでも広大で、実に雄大な眺めだ。

雄大なリーフ氷原

リーフ氷原の下流を望む
雲は相変わらず多かったが、ロブソンに雲がぶつかって左右に散っているらしく、この辺りは晴れ間が覗いていた。いつまで見ていても飽きない景観で、結局2時間あまりもボーッと過ごしたのであった。
ちょっと寒くなってきたので帰途につくと、メドウに下った頃から後続が続々と現れるようになった。しかし、雲は一層増えてしまい、ロブソンは完全に雲の中だ。明日には下らないといけないのだが、その雄姿は見られるのだろうか…

帰路、マム・ベイスン方面を望む
バーグ・レイクの近くまで歩くと、昨夜会った日本人と再開した。今日はマム・ベイスン(Mumm Basin)に行ったそうだが、曇っていてイマイチだったらしい。彼は話し好きらしく、通りかかったレンジャー(もう友だちのようになっている)に、私を「アンディー」と言って紹介してみたりする。その後もレンジャーといろいろ話して、それに付き合っているうちに夕方になってしまった。
キャンプ場に戻ると、成りゆきで夕食をともにするが、彼は山岳ガイドを目指して講習を受けてきたとか、アラスカまでヒッチハイクで往復してきたとか、アラスカでクマに襲われて闘ったとか、いろいろな話をしてくれる。その後も政治のこと、歴史のこと、経済のことなど、これでもかというほど語りかけてきた。それに適当に対応していると、気がつけば深夜零時を過ぎていた。