バンフの街から仰ぎ見る山と言えば、やはりカスケード・マウンテン(Cascade Mountain:2997m)だろう。とりわけカスケード・ガーデン(Cascade Gardens)から眺める姿は有名で、パンフレットなどでもよく紹介されている。今日と明日は、この岩山を東西両面から鑑賞しようと思っている。

カスケード・ガーデンからのカスケード・マウンテン
と言うことで、1日目は東壁に迫るべく、Cレベル・サーク(C Level Circue)に向かう。連日レンタサイクルで出費がかさんでいるので、この日は徒歩でトレイルヘッドに赴くが、これが意外に遠い…左に岩壁を見上げながら歩いていくのだが、何台もの車に追い抜かれ(もちろん、他に歩くバカはいない)、結局2時間もかかってしまった。

東壁を見上げながら歩いていく
気を取り直してトレイルを歩き始めると、しばらくは林の中の登りが続く。途中、採鉱跡まで登ると視界が開け、ミネワンカ湖(Lake Minnewanka)を望むことができるが、すぐに森に入ってしまい、展望のない道を歩く羽目になった。
しばらくするとバンフ方面の眺めが得られるようになり、やがて氷河跡の下に出て、カスケード・マウンテンの東壁が迫って見えてきた。ここまで1時間足らず、登山口までの苦労に比べれば、予想以上に楽な道のりであった。

氷河跡の下部より
さらに迫力ある展望を得るため、ここから氷河跡に沿って岩場を登っていく。徐々に景色が良くなってくるが、ちょうど雲も湧いてきて、眺めを見事に相殺してくれる。これでは承服しがたいので、展望の良い岩の上に座って、天候の回復を待つことにした。
ところが、天気は一向に良くならないばかりか、むしろ悪化してきた。嫌な予感がしたので、少し下ってCレベル・レイク(C Level Lake)から改めて眺めようとすると、いきなり大雨が降ってきた。少し耐え忍ぶも、どうにもならない降り方となったので撤退。林の中に逃げ込み、そそくさと下山の途についた。

Cレベル・サーク上部より
森の中を早足で下っていくと、下りきったところで雨は止み、右手にはランドル山が顔を覗かせている。後は再び2時間かけてバンフの街に戻っていくが、何とも無駄な苦労が多く、やりきれない1日であった。
翌日は再び冴えない天候であったが、回復を祈って出立する。昨日で歩きは懲りたので、タクシーを呼んで登山口に向かう(かなりの登りなので、自転車は無理)が、たかだか6kmの登りなのに、$50(約4,000円)も取られてしまった。事前に料金を確認しなかったのが悪いが、これは明らかにボッタクリだ(聞き返しても、平然と要求してくる)。まさかカナダでこんな目にあうとは…
かなり気分を害されたが、気を取り直してスタート。始めはスキー場を突っ切って、森の中へと入っていく。緩やかに下ってフォーティ・マイル・クリーク(Forty Mile Creek)を渡ると一転して登りとなり、分岐を右にゆくと、ここからジグザグの急登が始まった。
ひたすら登っていくと、やがて傾斜がゆるみ、林を抜けて視界が開けるようになった。荒々しいカスケード・マウンテンの岩塊を見上げながらメドウを進むが、曇天のため、どうしても色あせて見えてしまう。と、ここでグループに追いついてしまったので一足で抜き去り、先を急いだ。

カスケード・マウンテンの岩塊
すると、まもなくカスケード・アンフィシアター(Cascade Anphitheatre)に到着。カスケード・マウンテンの岩壁が迫り、迫力の光景だ(かつてはここに氷河が流れていたのだろう)。1時間半ほど歩いたので、しばらくはここで休み、体力の回復を図った。
先ほどのグループが現れたところで、もう少し上に登ることにする。ここからはあまり一般向きのコースではないが、この上の方が間違いなく眺望が良いので、そこまでは行こうという魂胆だ。
少し戻るようにして尾根に取りつき、岩場を登っていく。次第に展望が開けてきて、ソーバック・リッジやバーミリオン・リッジ(Vermilion Range)が背後に聳えて見える。正面にはカスケード・アンフィシアターからカスケード・マウンテンにかけてのU字谷が見渡せ、なかなかの眺めだ。これで晴れていたら、どんなに素晴らしいことだろう。

カスケード・アンフィシアター

バーミリオン・リッジ
岩場は歩きにくく、道もわかりにくいので、ケルンを頼りに登っていく。すると、岩の隙間からちょこまか動く動物が見えた。こんなところにいる動物と言えば…きっとナキウサギだろう。氷河時代の生き残りで、恥ずかしがり屋のナッキーは、賑やかなところでは滅多に見られないが、今は周囲に誰もおらず、極めて静かだ。ここはちょっと待機して、ナッキーと密会することにしよう。
岩に身を隠してじっとしていると、しばらくして、ナッキーが愛らしい姿を現した。北海道の大雪山以来の再会に胸が躍るが、感情を抑え、失礼して写真に収めさせていただく。その後も数匹と対面させてもらうことができ、大満足であった。

ナッキー登場!

愛らしい姿だ
こうして足元に注意しながら歩いていくと、途中で道がよくわからなくなってしまったので、尾根に沿って小ピークへと登りつめていく。ここからは頂上が良く見えるが、歩くとなるとさらに2時間かかるうえ、眺めているうちに雲がかかり、天候はさらに悪くなってきた。こんな状況で無理をしても仕方ないので撤退を決意し、後は淡々と下っていった。

小ピークから山頂を望む
トレイルヘッドまで戻ると、後はバンフに帰るだけだが、もうタクシーを使う気にはなれないので歩いて下っていく。舗装路をだらだらと歩くが、これが近いようで結構遠い。いい加減疲れてくるが、無情にも車は通過するばかり…諦めて進んでいくと、下りきる手前でスイス人の老夫婦が拾ってくれた(あまりに不憫に思ったらしい)。やれやれ、これでどうにかバンフにたどり着くことができた。