何とかグレイシャー観光を終えたので、いよいよカナダに向かう。チーフ・マウンテン(Chief Mountain)を左に見ながらチーフ・マウンテン国際ハイウェイ(Chief Mountain International Highway)を走り、再びの国境越えとなるが、今度はほぼノーチェックですんなり通過することができた。そして、そのままウォータートン・レイク国立公園(Waterton Lakes National Park)に進んだ。

チーフ・マウンテン
ウォータートン・レイク国立公園は、アメリカ側のグレイシャー国立公園と合わせて世界初の国際平和公園を形成しており、1995年には世界遺産にも登録されている(でも、入園料は別々に徴収される)。グレイシャー側が圧倒的に広いため、カナディアン・ロッキーの一角にしては地味な存在だが、「山々が大平原に出会うところ」と表現される雄大な景観が見られるところだ。
分岐を左折してゲートを通過すると、左手に湖が見えるようになる。ウォータートンではロウアー(lower)、ミドル(middle)、アッパー(upper)と3つの湖が続くが、メインとなるのはアッパー・ウォータートン・レイク(Upper Waterton Lake)。ここの畔にはウォータートンのタウンサイト(Townsite)があり、有名なPrince of Wales Hotelも湖を見下ろすように建てられている。まずはこの絶景を眺めようと、ちょっと脇道に入って湖を遠望。写真やパンフレットで見た景色だが、さすがに絵になる光景だ(この湖の南側はアメリカである)。

ウォータートン・レイクの眺め
ウォータートンの街に入ったら、さっそくカナダドルを引き出す。が、ここにあるATMでは現金を下ろせない。するとお店の人が出てきて、北米居住者でないと無理なので、代わりにクレジットカードで換金してくれるという。あまり安易に使いたくなかったが、もはやこの手しかないので、渋々了承して現金を得たのであった。
今日はウォータートンの変わり種ハイキング、クリプト・レイク(Crypt Lake)へのトレイルを歩く。これはボートで対岸に渡り、そこから岩壁のトンネルを越えて国境の山上湖に至り、またボートで戻ってくるというもので、船はオンシーズンでも1日2便しかない。さっそく桟橋に出向くと、朝早いため人もまばらだが、チケットはまだ大丈夫とのこと。出発まで1時間あまりあったので、しばらくはただぼんやりと過ごした。
そして9時前、ようやくボートの出発を迎えるところで、ハイカーがポツポツと集まり始めた。と言っても、たかだか十数名。それほど混雑していない。船は定刻の9時に出立し、わずか10分ほどでクリプト・ランディング(Crypt Landing)に到着。ここで皆一斉にスタートとなるが、混雑の中を歩きたくないので、私はいきなり競歩張りのダッシュで先頭に立ち、後続を引き離していった。
平坦な道を歩くとすぐに分岐が現れるが、ここはメインの左に入ってつづら折の道を登っていく。とはいえ、傾斜は結構緩いし、森の中を歩くので、それほど問題ではない。30分も進むと人の気配がしなくなったので、ここからはややペースを落として登る。やがてヘル・ローリング・クリーク(Hell Roaring Creek)の近くに出ると、前方の視界が開け始め、バーント・ロック滝(Burnt Rock Falls)が見えるようになってきた。

バーント・ロック滝
ここからも沢沿いの登りが続くが、景色の良い道が続き、花も多く見られるので苦痛ではない。右にはボスウェル山(Mt Boswell:2439m)が聳え、再びのジグザグで高度を稼ぐとさらに視界が開け、正面奥にはクリプト滝(Crypt Falls)が見える。あの上に目指すクリプト・レイクがあるのだ。

クリプト滝を望む
ここは景色の良いところなので小休止。しばらくしてカップルに抜かれたが、後続の気配はないので、彼らが離れるのを待って再スタートを切る。じりじりと登りが続くが、やがて道は平坦になり、旧キャンプ地が現れた。先ほどの2人はここで休んでいたが、私を見て「クマを見たか?」と聞く。心当たりはないので"No"と答えると、実は先ほど、ブラック・ベアが近くにいるのを見たという。危ない危ない…(キャンプ地が閉鎖されているのも、クマの被害が多くて危険なためなのだ)
小さな沢を越えると岩盤に取りつき、ついに本格的な山道となるが、まもなく梯子が現れ、その上の穴の中を通ることになる。屈みながら、長さ20mほどのトンネルを抜けると、今度は鎖場になっているが、気をつけて歩けば問題ではない。振り返れば眼下にクリプト・プール(Crypt Pool)、渓谷越しにビミィ・ピーク(Vimy Peak:2379m)が望め、クリプト滝も近い。滝の上まで来て、ひと踏ん張りの登りをこなすと、目の前には絶壁に囲まれたクリプト・レイクが広がった。

来し方を振り返る

クリプト・レイク
先頭で湖にやって来たので、誰もいなくて実に静かだ。ここは標高1950m(660m登ってきた)、高い岩壁に覆われているので、思いのほか涼しい。いまだ残雪が多く、一部は湖に残っているのも納得だ(これでは湖の周りを歩けない)。ちなみにここは国境にあたり、湖の向こうはもうアメリカ。そんな気配はまるでないが…

クリプト・レイク上の氷
しばらくして先のカップルが現れ、その後は続々と登ってきて賑々しくなった。これは耐え難いので場所を移動し、誰もいないところで昼食を取る。結局2時間ちょっとで登ってしまい、午後4時の便まで時間はたっぷりあるので、のんびりと過ごした。
時間が経つにつれてハイカーは去っていき、湖は静寂を取り戻してきた。しかし、ボートに乗り遅れるわけにはいかないので、ほどほどのところで退却を決意。後ろ髪をひかれながらも帰路についた。
下りは楽なもので、途中何人もの人たちを追い抜きながら快調に進む。これでは余裕なので、中ほどでヘル・ローリング滝(Hell Roaring Falls)に寄ってみるが、大したことはないのですぐに下山。こうして無事、3時半には発着場に戻ることができた。
迎えのボートでタウンサイトに戻ったら、予約しておいたWaterton International Hostelにチェックイン。思いのほか綺麗なユースで、さすがはカナダと見直した。