昨夜は暑さに油断して、寝袋に包まず寝てしまったが、起きてみると足中が吸血バエ(Jejenes)に喰われていて、かなりの跡が残ってしまった。この辺りは多いと聞いていたのに、私としたことが…
この日は昨日以上に良い天気で、特に目の前のクケナン・テプイ(Kukenán Tepui:2600m)が美しい。今日はいよいよロライマ山の頂上台地に上がるので、どんな地球離れした景観が見られるのか、楽しみである。

クケナン・テプイ
朝食を終えたら歩き始めるが、この日は、平坦続きの初日とは違って、最初から登りである。まだそれほどきつい勾配ではないので、淡々と歩いていくが、早くもイスラエル人は遅れ、他の人たちも後退していった。口ほどにもない人たちだ。
しばらくはジリジリとした登りが続くが、ロライマの絶壁が次第に迫ってくるので、それほど辛くは感じない。途中、ぬかるんだ箇所もあったが、慎重に歩いてクリア。中ほどのキャンプ場で小休止し、他のメンバーが来るのを待機。やがて勢揃いしたら、再びダラダラと歩いて、昼過ぎには岩壁直下のベースキャンプ(Campamento Base)に到着した。

絶壁が迫ってくる
これまではほとんど人に会うこともなかったが、ここで先を歩いていたグループが昼食中で、我々が食事の準備をしている間にも、下山してきたグループとすれ違った。それほど混んではいないが、それなりに歩いているようだ。

行く手のルートがよくわかる
ここまで来ると、これから登るルートもよくわかる。今日はここまで800mあまり高度を稼いできたが、この先また800mあまり登らなければならない。しかも距離は2.5kmほどだから、かなりの傾斜である。通常のペースで4時間かかるそうだが、心して歩かなければなるまい。
食事を終えたら、いよいよ崖に沿った登りをスタートするが、私はベースキャンプと崖の写真を撮りたいのに、いまだ曇っていたので、それを待ってから出発しようと決意。他の人たちを見送り、陽が差すのを待つ。しかし、午後になって雲が増えてきたせいか、この絶壁にはなかなか陽が当たらない…結局30分待機したものの、一向に回復の兆しが見られなかったので、諦めて登り始めることにした。
ここからの登りはいきなり急で、もろい岩場が続くが、30分のハンディがあるので、早く追いつこうと急いで登る。最初の難所を突破し、水場にたどり着くと、早くもイスラエル人とガイドに出くわした。まだ10分少々しか歩いていないのに…
ここはすんなり通過し、森の中をひたすら登っていく。ハイペースのまま登り続けると、30分ほどでチェコ人の夫婦にも追いついた。私が半分のペースで登ってきたと話すと、驚いて"Samurai!"などと言う。時折絶壁を見上げながら、さらに登ると、ついにポーターをも抜き去った。登りは(好きではないが)得意なので、すぐに追いつける自信はあったが、これほど他愛ないとは。

絶壁がいよいよ近い
さらに進むと、ほどなくして傾斜が緩み、水場が現れたので休憩。ちょっと本気を出し過ぎて差が開いたので、ここでたっぷりと休む。この辺りまで来ると、植生も変わってきたのか、今まで見られなかった植物が増えてきているように感じる。魔境の世界はもうすぐだ。
汗がひくまでゆっくり休むが、その間に現れたのはポーターだけで、他の人の姿はない。あまり眺めの良くないところにいても退屈なので、再び登り始めると、しばらくで視界が開けて、行く手の登り道と、背後には屏風のような絶壁が見えてきた。ここは絶好のビューポイント。眼下には広大なグラン・サバナも見えているので、後続が現れるまでのんびり過ごすことにした。

迫力の絶壁

グラン・サバナを見下ろす
しばらくすると、チェコ人の夫婦、ガイドの順で現れる。彼らは構うことなく歩き続けていくが、イスラエル人はまだ見えない…ガイドは、もう夕暮れも近いので、見かけたら早く登るよう諭してくれ、などと言う。普通はガイドの役割だと思うが、すっかり私が彼の友人だと思い込んでいるらしい。そして、さらに30分あまり経ったところで、ようやく彼の姿が見えてきた。さっそく忠告するが、またも「そんなの大丈夫だよ」とのんきな様子。あまり説教しても無駄なので、伝言だけしたら、私もさっさと歩き始めた。
道はここからいったん下り、いよいよ最後、岩場の登りに取りかかる。例によってハイペースで登っていくと、シャワーのような滝を過ぎた辺りで追いつき、すぐに追い越してしまった。すっかりガイドも脱帽のようで、"You are strong."と言い残して、後方に消えていく。私はなおも登っていくが、その後、頂上の手前で待つように指示されたので、ほぼ登りきったところで腰を下ろし、1人でゆっくり過ごした。
何だかんだでもう陽が暮れかかっていたが、ようやくイスラエル人以外が上がってきて「早くしないと暗くなるので、キャンプ地まで行く」と言う(どうやら見限ったらしい)。周り込むようにしてテプイの頂きに上がると、荒涼とした別世界が広がっているが、とにかくもう太陽が沈んでしまうので、ガイドに付いて早歩き。途中で落日したものの、何とか暗くなる前に岩場のキャンプ地にたどり着くことができた。
しかし、イスラエル人はいつになっても現れない。それもそのはず、頂上台地では道がほとんどわからないうえ、暗闇になってしまったので、素人が1人で歩くのは無理だ。まもなくポーターが迎えにいき、無事に保護されたが、何とも人騒がせな男である。

頂上台地から望む夕陽