最終日もこの上ない晴天に恵まれ、ここ数日は絶好調だ。早めに朝食を済ませたら、さっそく最後の出立。まずはル・プティまで戻るが、ここに泊まっていた人たちはちょうど出発前。結構きわどいタイミングでかわし、わずかに先んじることができた。
ここから右の道に入り、川を渡ったら森の中をジグザグに登り始める。この辺りも楽ではないが、昨日の急登と比べたら子供だましのようだ。すぐ後ろから迫る後続部隊を気にしつつ、着実に歩を進めると、やがて樹林越しに目指す峠が見えてきた。こうなると斜面は緩み、見晴らしの良い場所を歩くようになる。後ろの気配は消え去り、静かな登りを満喫しながら歩いていった。
牛舎のあるところまで来ると、道は歩きやすくなり、緩やかなつづら折の道になっていく。遠かった峠はもう少し…すると、峠の向こうからアルプスの女王、モン・ブランが頭をもたげてきた。予想よりもずっと大きな姿に大興奮。一歩一歩進むごとに、どんどん大きくなっていく。
そして、バルムのコル(Col de Balme:2191m)に達すると一気に視界が開け、正面にシャモニの谷、左にヴェルト針峰とモン・ブラン、右に赤い針峰群という、絵に描いたような風景が飛び込んできた。これぞフィナーレにふさわしい絶景だ。これは写真で見ていたので、絶対に見たいと思っていた光景だが、実際に目の当たりにすると感動も一潮。ちょうど国境に当たる場所に陣取って、再びのモンブラン山群を目に焼き付けた。

バルムのコルより
しばらくして大杉さんも現れたが、やはりかなり興奮している模様。徐々に日帰りハイカーなどで賑わってきたが、2人して腰を下ろし、フィナーレの舞台を堪能したのであった。
日本のガイドブックを見ると、ここからはテレキャビンで下って終了となっているが、天気も良いのに、このまま終わってしまってはもったいない。ここはさらに欲張り、モンブラン山群の展望を最後まで楽しむことにしよう。
峠からは北側の巻き道をたどり、行く手に見えるポゼット小針峰(Aiguillette des Posettes:2199m)の稜線をゆく。左手にモン・ブランを見ながら進むこのコースは、TMBのフィナーレにふさわしい。
道はトラバース気味にいったん下り、やがて稜線を登るようになる。風がやや強いのが辛いところだが、モン・ブランの優雅な姿がそれを帳消しにしてくれる。左にはツール氷河(Glacier du Tour)が良く見え、前方には赤い針峰群が迫って見えてくる。振り返ればバルムのコルも近い。そして山頂に立てば、シャモニの街並みも見通せるようになり、モンブラン山群は一望のもと。わずかな距離なのに、これだけ展望が広がるのだから、やはり自分の足で歩いてみないとわからないものだ。ここでも展望を味わい、しばらく周囲の景観に見惚れたのであった。

モン・ブランを見ながら稜線闊歩

ツール氷河
ここからの下りも、しばらくは視界が開けて気持ち良い。下るにつれて木々が多くなり、やがて展望は効かなくなってしまったが、もう十分に満足。後は樹林帯を淡々と下っていった。
所々分岐がわかりにくいので、地図を頼りに、大杉さんを案内しながら進む。すると車の音が聞こえ始め、エンディングが近づいてきた。やがて車道に出て少し下ると、ついにトゥレ・ル・シャンのバス停が登場。これで完走だ!少し遅れてきた大杉さんと握手して、お互いの労をねぎらった。
それからはバスに乗って、あっけなくシャモニに帰着。軽食を済ませたら、観光案内所に出向いてお礼をする。本来ならこの後、打ち上げでもすべきなのだろうが、私のスケジュールが詰まっていて、もう今夜には夜行列車に乗ってパリ(Paris)に向かわないといけない。非礼を詫びて別れようとすると、感極まったのか、大杉さんが声を詰まらせてしまった。そんな…これでは別れづらいじゃないか。最後は笑って別れたかったので、いったん話を反らし、正気を取り戻したところで改めてお別れ。このデコボココンビも解散となった。
その後、YHAに戻って荷物を引き取ると、ちょうど貞包さんがいたので荷物を見てもらい、タダでシャワーを浴びてしまう。ベンチに戻るとガイドと打ち合わせ中で、今度は郊外の針峰に登るらしい。貞包さんは残りまだ1週間、お互いの旅の無事を祈って、ここでお別れとなった。まさかこの数日後、滑落死するとは夢にも思わず…
こうしてどうにか最終列車に乗り込み、サンジェルベ=ル・ファイエで乗り換え。夜行列車に飛び乗って、翌朝には無事パリにたどり着くことができた。帰国便まで半日ほど猶予があったので、残り時間で有名な凱旋門(Arc de Triomphe de l'Etoile)やエッフェル塔(La Tour Eiffel)などを軽く観光し、この3ヵ月半のヨーロッパ旅行を終えたのであった。

凱旋門

エッフェル塔