本当はもっと長居して、バックカントリーの1つや2つ訪れたいものだが、今日で定期航空便が終わり、ほとんどの施設も閉鎖されてしまうので、もう帰るしかない。事実上の強制送還であるが、致し方ないところである。
しかも、こんな日に限って朝から快晴で、ブラックホーン山もリーガル・マウンテンも全開だ。時間の都合上、もはや遠出はできないので、とりあえず近場の眺めの良い場所に移動して、この絶景を眺めさせてもらった。

アトナ・ピークスを望む

リーガル・マウンテンとルート氷河上流

ボナンザ・リッジ
そんなこんなで時間が過ぎて、出発の時間になってしまった。今度来る時にはたっぷり時間を取り、人知れぬ奥地に入ってウィルダネスにどっぷり浸かろうと決心して、泣く泣くこの場を去ったのであった。
30分弱の飛行では、相変わらず素晴らしい展望を得ることができるが、私は左側の席に座らされてしまったので、右手のランゲル山脈を望むことができない…無念ではあるが、往路でたっぷり楽しませてもらったので、我慢することにしよう。

さらばルート氷河
チットナに着くと、誰も迎えに来ていないので焦ったが、しばらくしてジェニファーが他の人たちをつれて登場。聞けば今日は別の客人がやって来て、チットナ周辺を案内しているのだという。別にやることがあるわけではないので、この後はしばらく私も付いていくことになった(これはもちろん無料だが)。
チットナの街に入り、まずコッパー川(Copper River)下流へのドライブに付き合うが、ここは道が険しいだけであった。まもなく引き返すと、途中からはランゲル山が良く見え、なかなかの眺めだ。橋を渡って広大な川原に出たらしばらく休憩し、これであっけなく終わったのであった。

ランゲル山を遠望する
客人とはここで別れて北上。ケニー・レイク(Kenny Lake)の手前で狭い道に入り、まもなく一軒の家に到着した。普通の家にしか見えないが、これが残り3泊お世話になるCopper River Hostel らしい。この時期、既に周辺の安宿は閉館しているので、できるだけ安い宿をと紹介してもらったのだが、どうやら知り合いの家のようだ。
家の中には多くの犬と猫、そして近所の男がいる。詳しくは話さないが、その蜜月ぶりから見て、2人は相当な仲のようである。まぁでも、部屋はちゃんとしているし、不自由なく過ごせれば問題ないが。
やがて夕方になり、夕食の匂いがしてきたが、今日はまれに見る天候であった。これなら夕陽が綺麗だろうと思い、絶景のウィロウ・レイクに行きたいので自転車を貸してくれないか、とお願い。すると、自転車では大変なので、車で言ってあげるよと男が申し出たので、お言葉に甘えて現場に急行した。
案の定天気は素晴らしく、ランゲル山脈が丸見えだったが、予想以上に風が強く、外に出たら飛ばされそうなほどであった。しばらく車内で待機するが、それでも寒さでかじかんでくるほど。やっとのこと山が赤らんだところで外に出て、ランゲル山やドラム山などを激写したが、自分だけでも寒かったし、相手には相当待たせてしまって申し訳なかった。

夕焼けのランゲル山

ドラム山も赤い

谷間からブラックバーン山を遠望
ここに来て天候が安定してきたのか、翌日もまた晴天で、絶好の行楽日和であった。しかし、出かけるところは極めて限られている…ガイドブックの情報では、少しチットナ方面に行ったところにコッパー川トレイル(Copper River Trail)があるというので、自転車を借りて行ってみることにした。
トレイルヘッドにはわずかな標識があったので、ここに自転車を置いて歩き始める。情報では、平坦な道のりで往復約10km、3時間ほどというので気楽に進むが、いかにも歩かれていないようで、道は多くの枯葉やクモの巣に覆われている。意外に手強いかもしれない…
トレイルは私有地を縫うように作られているらしく、区画に沿って無駄に曲がったりしている。そして、途中からは道がかなり怪しくなってきて、ルートファインディングしながら歩く羽目となった。しかも、所々湿地帯のようになっていて、気をつけないと足を取られてしまいそうだ。意地で先に進むが、アラスカは最後まで甘くないようだ。
迷いつつも歩き続けると、途中でドラム山が登場。その先では小さな池が現れ、樹林越しにランゲル山が見えている。しかし、本当の問題はここから…
木々を掻き分けて進むと、やがて崖の淵に出て、そこをこれから下るようだ。ブラックバーン山を正面に見て眺望は抜群だが、この谷間は道なき道で、棘のある木々をかいくぐって下らなければならない。時には斜面を迂回し、時には倒木をまたいだりして進むが、これはもうトレイルとは言えない。なんとか川岸近くまで下ったが、この先、川原に行くまでも一苦労だし、展望は望みようもないので、ここで諦めて戻ることにした。
帰りも苦戦の連続で、無駄に疲れてしまったが、どうにか無事歩き終えることができた。国立公園を追い出された挙句にこんな目に遭うとは、アラスカの自然はどこまでも厳しい。

ドラム山が見える

池越しのランゲル山