氷河クルーズを終えて、今日からの3日間は、近郊のチュガッチ州立公園(Chugach State Park)でハイキングを行う予定である。既にパブリックランズ・インフォメーションセンター(The Alaska Public Lands Information Center)で情報は入手していたので、問題は天気。予報によれば、22日、23日は曇時々晴で、24日は雨が降るという。ならば、最初の2日間出かけることで決まりだ。
今日はアンカレジから程近い、ウィリワウ・レイク(Williwaw Lakes)周辺を歩く。トレイルヘッドまでは、1999年にバスが廃止されてしまったので、タクシーを使うしかない。それでもコスト削減の必要から、近場のダイモンド・センター(Dimond Center)までバスで向かい、そこでタクシーを呼んで現場に赴いた。
まだ誰もいない中を歩き始めると、最初のうちは幅広の易しい道が続き、楽々進む。電力線の下を通り、周り込むように歩いて沢を越えると、一転して登りとなり、まもなく分岐が登場。ここを右に入っていくが、とたんに狭い道になった。振り返ればアンカレジの街が遠望できるが、構わず草原帯を登っていった。
再び沢に向かって下り、それを越えると登りが待っている。ちょっと単調な展開が続き、ダラダラと歩いていると、突然、草むらから馬が現れた。いや、よく見るとメスのムースだ。あまりに至近距離だったので、お互いじっと見つめ合ってしまったが、すぐに向こうは草を食べ始めた。ムースは怒らせると非常に危険な動物で、こんな数メートルの距離でばったり会ってはいけない。しかし、向こうはこちらを意に介していないようなので、刺激しないようにそーっとトレイルを通過してクリア。危ないところだったが、おとぼけな女の子で助かった…

ウィリワウ山を望む
分岐を右に見送ると、まもなくミドルフォーク・キャンベル・クリーク(Middle Fork Cambell Creek)に沿って歩くようになる。やや高いモレーン上をゆくが、この辺りは平坦に近く、楽に進むことができる。行く手には湖やウィリワウ山(Mt Williwaw)も見えてきて、気持ちよい谷の道だ。
やがて沢の畔を歩くようになると、目の前に池や湖が現れる。しかし、さらに沢に沿って歩いていくと、トレイルは次第に心もとなくなり、怪しげになってきた。おかしい…と思って地図を確認すると、どうやら沢を渡るらしい。仕方なく引き返し、適当なところで沢を渡って正規の道に合流していった。

ウィリワウ・レイク

谷下のウィリワウ・レイクを振り返る
沢から一登りでウィリワウ・レイクが現れるが、まずまずの眺めだ。この上にも湖があるので、引き続き登っていくと、今度はエリオット山(Mt Elliot)とウィリワウ山に囲まれた険しい場所に入ってきた。この先、目の前の急斜面を登ると思うと辛そうだが…

最奥の湖より
一息入れたら、いよいよ急斜面を直登し、峠を目指す。かなりの勾配で、決まった道もないが、とにかくまっすぐ登っていく。やっとのこと稜線にたどり着くと、北側の谷が望めるようになった。が、どうやら登り過ぎていたらしく、下は崖が切れ落ちていて、とても下ることはできない。やむなく稜線を少し下り、踏み跡のあるところに向かった。
どこから下れるのか心配だったが、しばらくで下りの踏み跡を発見。それにしても急な下りで、もろい岩場なので危険を伴う。来し方の谷に別れを告げたら、この急下降を慎重にこなし、谷の下へと下りていった。
これで一件落着と安心し、しばらくはロング・レイク(Long Lake)の北岸を気楽に進んでいく。その先もノースフォーク・キャンベル・クリーク(North Fork Cambell Creek)に沿って、緩やかに下っていくのだが、これが長い…既に15kmほど歩いていたが、途中ゆっくりし過ぎたのか、もう昼下がり。しかも、まだ10kmぐらい残っている。徐々にまずい展開になってきた。

ロング・レイク
急ぎ気味に歩いていくと、踏み跡は途中からかなり不確かになってきた。情報によると、この先、沢が合流してくる手前で渡渉することになっているが、そのような道は見当たらない。仕方なくツンドラ(Tundra)の中を適当に歩くが、足下が良く見えないので、これはかなり危険だ。所々落ち込んでいたり、水が流れていたりして、思うように進むことができない。なんとかして沢を渡らないといけないが、それも困難な情勢となった。
どうにか打開策を見つけようとするが、道がないのでどうすることもできない。しかし、もう時間も迫っていたので、無理やり沢に近づき、渡渉を試みる。苦戦を強いられながら沢辺にやって来たものの、この辺りは既に結構幅があり、濡れずに越えるのは不可能だ。こうなると打つ手はないので、下半身をどっぷり浸かって渡渉した。
対岸に出たら、奥のピークに向けて斜面を登っていく。この辺りも道はなく、ツンドラの中を歩かなければならないので、体力の消耗が著しい。それでも耐えて稜線に出ると、ここからは踏み跡が明瞭になってきた。厳しい登りをこなし、小ピークに上がると、目指すニア・ポイント(Near Point)は目の前にあった。
稜線のアップダウンをこなせば、岩だらけのピーク、ニア・ポイントに到達。アンカレジの眺めが良く、ゆっくりしたいところだったが、タクシーを午後5時に呼んでいる以上、もはや猶予はない。小休止したらすぐに下山に取りかかる。

ニア・ポイントからの眺め
ここからはかなりの急下降で、滑りやすい危険な道であったが、大胆かつ慎重に下って難所を突破。すると道は緩やかになり、明瞭で歩きやすくもなったので、後は競歩なみの速さで駐車場を目指した。
急ぎに急いで、駐車場には5時ちょうどに到着することができた。タクシーはまだのようなので、ひとまず現れるのを待つ。しかし、迎えのタクシーは一向に現れず、結局1時間あまり経っても姿を見せなかった。忘れられたのだろうか…心身ともにかなり疲れていたが、やむなく街中に向けてトボトボ歩く。そして、さらに10kmほど先でバスを捕まえて、やっと街に戻ることができた。