こうして今回の旅も無事終幕したわけだが、正直、今回は前回以上に天気に恵まれず、苦難の連続であった。17日間の滞在中、本当に良かったのは2~3日に過ぎず、あとは曇りか雨で、ひどい雷雨にも見舞われて、危うく命を落とすところであった。
そのため、予定していたフォックス氷河のヘリ・ハイクは中止となり、マセソン湖からマウント・クックやタスマン山は望めず、カスケード・サドルからはアスパイアリング山が見えず、ボールパス・クロッシングでは核心部に迫れず…と、期待していた絶景はお預けになってしまった。せっかく入念な準備をしてきたにもかかわらず、こういう結果になり残念である。
こうなって改めて気づかされるのは、限られた日程で予定を組むと、消化不良になりかねないということ。もちろん今回も、リーズ・サドル周辺やミューラー・ハット付近では素晴らしい大自然に触れることができ、訪れて良かったと思えたが、やはり本当の絶景を眺めたいと思ったら、融通の効かないスケジュールでは駄目だ。願わくば数ヵ月単位で休みを取って、その時々の状況に応じてじっくりと旅をしたいものである(もっとも、日本では不可能に近いので、その場合は仕事をやめざるを得ないが…)。
それに予定が詰まっていると、どうしてもそれに従って行動せざるを得ず、たとえ1日待てば晴れるとわかっていても、無理をしなければならない。その結果が豪雨での遭難未遂であり、あれはほとんど死んだも同然の、無謀な行為であった。我ながら、自然の恐ろしさを軽んじた行為だと反省している。
しかし一方で、今回は前回以上に有意義な面もあった。前回はと言うと、初めての海外旅行ということもあって、ごくありふれた個人旅行をしたに過ぎなかったが、今回は初めて氷河の上を歩いたり、食料・寝袋・テントを担いでキャンプをしたり、氷雪の峠を登攀したりと、これまで以上に大自然に分け入り、様々な経験を積むことができたのだ。
それゆえ、体力的にはきつい面もあり、技術的にもまだまだ未熟であるとわかったが、これで世界が広がったのは間違いない。とりわけトレッキングに関しては、キャンプを体験し、難コースを克服することで、それなりに上達したと思っている。やはりこういうことは、失敗を繰り返しながら経験を積んでいくしかないので、その意味ではとても良い機会であった。
ニュージーランドは(トレッキングを含めた)観光インフラが整っているので、このような初体験を実践するには好都合な場所である。特に山小屋の整備状況は素晴らしく、日本とは大違いだ(余談だが、日本の山小屋はボロい上に、なぜあそこまで詰め込むのだろう…あれでは快適な時間を過ごしようがない!)。しかも、これでもまだ限られたコースしか訪れていないので、また機会を作って、様々な自然に出合いたいものである。
ともあれ、これで予定していた"New Zealand Walking Journey"は、計35日をもって終了した。この2回の旅では、南島の中南部を訪れたに過ぎないが、さすがに「地球の箱庭」と呼ばれる国の中でも美しいエリアとあって、期待を裏切らない大自然が広がっていた。働きながら旅するには限界があるにせよ、年末年始を最大限活用して長期休暇を取得し、普通のパック・ツアーよりは充実した旅になったと思っている。NZよ、ありがとう…
そして、夢はさらに広がるばかりだ。これで海外デビューを果たし、ある程度の経験も積むことができたので、次は世界に羽ばたきたいと思っている。
具体的には、NZ(3度目)、オーストラリア、タヒチ、パタゴニア、ギアナ高地、コスタリカ、アメリカ国立公園(ヨセミテ、グランドキャニオン、イエローストーンなど)、カナディアン・ロッキー、アラスカ、北欧、ヨーロッパ・アルプス、カラコルム、シルクロード、横断山脈(中国西南部)、ヒマラヤ…といったところをじっくり巡ってみたいものだ。
もちろん、これが今すぐに実現できるわけではない。日本で働いている限りは少しずつしか行けないし、それ相当の資金も準備しなければならない。また、治安や疫病への対処も必要だろう。そう簡単なことではないが、こうした大きな夢を持っていれば、今後の人生も飽きないし、仕事に励むことができるというものである。
それに、実は秘策も考えている…と言うと驚くかもしれないが、何年も前から温めてきた構想があるのだ。それはまた別の機会に譲るとするが、こちらも楽しみにしていただければ幸いである(マツキツキ渓谷で一度死んだと思えば、もはや恐れることなどない)。