ここ2日間ほとんど収穫がなかったので、最終日はこれまでの分を取り返すつもりであった。特に、2大目的の1つ、ナキウサギの激写はまだ叶わなかったので、それを最優先とすることにした。そこで、まずは早朝出発して、昨日断念した銀泉台に赴くことにした。
5時半頃起きてみると、午前中は雨の予報にもかかわらず、雲の切れ間から太陽の光が覗いていたので、今日は期待できると思い、6時前には出発した。ところが、銀泉台への道を登り始めると、天候が悪化し、やがて暴風雨と化してしまった。仕方なく銀泉台ヒュッテで天候の回復を待つも、良くなるどころかさらに悪くなったので、これでは午前中一杯は駄目だろうと判断し、1時間半ほど粘った後、ついに下山する決意を固めた。
となると、ナキウサギが見られる可能性の高い地域は、高山部が危険なため、もはや然別湖周辺に限られた。しかも十勝地方の予報は晴時々曇であったので、そちらに賭けて南下することにした。これで今回4度目となる三国峠越えも、今回ばかりは霧が晴れており、糠平湖では快晴であったので、大いに期待が持てた。

糠平湖 (展望台付近より)
ところが、然別湖周辺になると急速に天気が悪化し、あいにくの空模様であった。仕方なく湖畔のホテルで一休みしていると、掲示板のようなところに観光案内が載っていて、そこには駒止湖周辺にナキウサギの生息地帯があると、おまけにナキウサギは早朝・夕方には良く出るが、昼間はまず出てこない、と書かれているではないか。
これは「目から鱗」であった。これまで1時間かけて東雲湖周辺まで行かなければいけないと思っていたのに、国道から5分ほど入ったところにあるというのだ。しかも、昼行っても駄目だという(どおりで2日目が駄目だったわけだ!)。妙に納得するとともに、既に10時を回っていたので、最後は駒止湖周辺に賭けてみることにして、急いで現場に向かった。

駒止湖
こうして国道脇の砂利道に車を置き、5分ほど歩くと、そこには岩のガレ場があり、既に10人あまりの人が高性能カメラを持って待ち構えていた。辺りは時折強風の吹くあいにくのコンディションであったが、皆今や遅しとナキウサギの登場を待っているのだ。話を聞く限り、今日はまだ姿を見せていないという。私は中央付近に陣取り、じっとガレ場を見つめて、姿が見当たらないか観察した。

駒止湖畔の岩場
しばらくすると、奥の方でカメラのシャッターが切られた。直ちに急行し、指差す方を見ていると、妙に胴の長い動物が一瞬現れ、すぐさま消えてしまった。どうやら、ナキウサギではなく、その天敵のクロテンのようだ。隣りの人たちの話では非常に珍しいらしいが、残念ながら逃げ足が速すぎて、カメラを構える暇さえなかった…
その後は気配すら全く感じなくなってしまったので、昼になったことだし、体も冷えてきたので、ひとまず退散して再起をかけることにした。そしてしばらく車の中で暖まった後、然別湖の遊覧船に乗り(退屈でちょっと寝てしまった)、豚丼を食べて腹ごしらえも済ませて、午後2時半、再び駒止湖畔のガレ場に向かった。
着いてみると、先ほどからいた人もいれば、新しく来た人もおり、人数は若干増えた程度だ。私は、先ほどクロテンが出た辺りに居を構え、ナキウサギの登場を待った。午前中に比べれば風が収まってきたので、出てくる可能性も高いのでは、と期待して…しかし、ナキウサギの姿はなかなか見られなかった。ただ、警戒心が弱く愛嬌のあるシマリスがいたので、皆それを撮影して気を紛らわしていた。

シマリス
すると、まもなく「キュッ」という甲高い声とともに、何かに追われたようにナキウサギらしきものが一瞬姿を見せて走り下った。辺りに一気に緊張感が走る。どこにいるのだ…と、目を凝らしてみていると、なんと私の1m手前に急に姿を現したのだ!
あまりの近さに驚き、向こうもびっくりしたようで動きが止まった。これはチャンスとばかりにカメラを向けるが、あまりに近すぎてなかなか焦点が合わない(望遠にしていた)。そしてその間に、あっという間に岩の中に隠れてしまったのであった。この間、およそ2~3秒だろうが、ものすごい近さで見られたという感動と、またも撮影できなかった悔しさが交じり合い、複雑な気持ちであった(どちらかというと後者の方が強かったが)。
しかし、こうなると俄然出てくる可能性が高まってきた。時間的にも3時を回り、ちょうど活動したい頃であろう。ここまで来たからには、絶対に映像に収めて帰らないと気が済まない…とその時、岩間から空を覗くナキウサギが現れた。今度こそ、とカメラを向けるが、この時不覚にも私が「あっ!」と思わず小声で叫んでしまったためか、またも一瞬で姿を消してしまった。反省!
やはり強風がいけないのだろうか、その後は鳴き声も聞こえず、姿もなかなか見せてくれない。徐々に諦めて帰る人も出始めた。このままでは終わりたくない…そう思ってカメラを向けていると、偶然にも岩間から様子を窺うナキウサギの姿が写った。興奮しながら、シャッターを切る…ついに、ついにその姿を捉えることができたのだ! すぐさま、手招きで近くの人に知らせるが、他の人がカメラを構えた時には、もはやその姿はなかった。しかし、私のビデオカメラにはその姿が残ったのである。この興奮は何とも言えないものであった。

ついに捉えた! これがナキウサギ!!
これで初期の目的は達したので、後はより良い映像を撮れるよう粘るだけであった。しかし、風の冷たさのためかナキウサギは以後姿を現さず、しかも隣りの人たちがカメラマン談義を始めてしまったので、もはや警戒心の強いナキウサギの姿は見られないと判断し、4時半頃、ついに現場を後にしたのであった(この時残っていたのは、談義に花咲く3人だけであった)。
その後南下すると、十勝平野は晴天で、扇が原展望台から見た十勝平野の広大な風景は、北海道の広さを改めて実感させてくれた。こうして大雪国立公園を後にし、広大な荒野・山脈を飛ばしに飛ばして走り抜け、なんとか時間ぎりぎりにレンタカーを返却(3時間休憩なしで走り続けた…)。そして夜9時過ぎ、新千歳空港から飛行機で東京に帰還し、3度目の北海道旅行もなんとか無事終えることができた。

扇が原展望台から望む十勝平野