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旅行記:北海道一人旅

15.ナキウサギの沈黙 (1999/9/24-25:雨時々曇

 秘湯満喫

  かんの温泉は、実は一昨年の旅行の際に行きたいと考えていたが、叶わなかったところだ。理由は、単純に公共交通機関ではアクセスできないからである(いちおう帯広から送迎バスが出ているが、13時発とかなり早めである)。しかし今回はレンタカーを借りているので、なんら問題はない。ただ、周りに案内らしきものがない山間の一軒宿なので、初めて来る人間は少し戸惑うかもしれない。

  ここの名物は、ずばり温泉である。明治末期に発見されて以来、難病で悩む多くの人々を全快に導いた効能から、厚生省より国民保養温泉に指定されており、現在では「七色の湯煙」と称して館内に7つの湯+総イチイ作りの露天風呂がある。そこで疲労困憊の私も、さっそく湯治効果を試してみることにした。

  ここは原則として混浴だが、時間帯によって女性用の湯も用意されている。私は結局、夜と朝で5つの湯+露天風呂を制覇したが、時間帯をうまくずらしたので、1人で快適に入浴することができた(熱さとの我慢比べはあったが)。

  その後、1970年代のたたずまいを残す旅館を後にし、近くにある「鹿見の湯」を覗いてみることにした。ここはユーヤンベツ川岸にある秘湯として有名であるが、行って見ると、雨のためか誰も入っていなかった。その大自然のスケール感に感銘を受けたので、最初は見るだけのつもりだったが、すぐさま引き返してタオルを持ち出し、入浴した。そして、しばし時が経つのを忘れて、大自然の湯を満喫したのであった。

Shikami Hot Springs
鹿見の湯

 ナッキーは何処に

  その後は然別湖に向かい、いよいよナキウサギの激写を試みることにした。まずは地元鹿追そば(オショロコマの唐揚げ付き)で腹を満たし、11時半頃、生息地として名高い東雲湖へ出発。昨夜から続く大雨のため、人はおらず、道も水溜りが多く難儀であったが、1時間ほどで目的地に到着した。後は2時間半以内に、その姿をビデオカメラに収めるだけである。

  ナキウサギは、私と似て臆病な動物なので、人間がいるとわかると出てこない。そのため、今回雨で人がいないのは、ある意味好都合であった。しかし、着いてからしばらくしても、鳴き声すら聞くことができなかった。雨が嫌いなのか、昼休み中なのか、あるいは今年の異常な暑さで参ったのか…などといろいろ考えたが、待てど暮らせど姿は見られなかった。この時期は巣作りで忙しく動き回るはずなのに…と思いながらも、きっと姿を現してくれるだろうと、淡い期待を抱いていた。

Rocks for Pika
ナキウサギが生息する岩場

  だが、雨が降り続く中、ナキウサギの気配すら感じられなかった。2時間あまり経ってようやく雨が上がったので、もうしばらく待ってみるものの、現実はそんな甘いものではなく、結局その姿を収めることができず…時間の都合上、ここで帰途につかざるを得なかった。

  わざわざ雨の中歩き続けた甲斐も全くなく、自暴自棄になりかけながら、私は失意のうちに層雲峡に向かった。難しいとはわかっていたものの、粘れば姿を見せてくれるはず、と思っていたので、大変ショックだ。しかも、明日は台風が来るという。どうやら、今後の計画の見直しが必要になってきたようだ。

 台風襲来

  そして翌日は、かねてから懸念していた台風18号が上陸する予定になっていた。昨年の2連続上陸に続き、今年もとなると、私は台風男なのかと疑いたくなる(雨男、山男、雪男、ハエ男などという言葉はあるが、台風男という表現があるかは定かではない)。秋の空は気まぐれであるが、何もここまで意地悪をしなくても良いのに…

  前夜の予報では、大雪山付近を朝の6時頃直撃することとなっていた。ところが起きてみると、驚いたことに陽が差しているではないか! 直ちにニュースを見ると、予報より北に向かって早く進んでいるとのこと。どうやら台風も大雪山を越えられず、迂回したようである(実際、昨年も直撃のはずが南側にそれた)。

  しかし、喜びもつかの間、急に風が強まり、まもなく雨が降り出してきた。でも、もう少し待てば大雪山の天候は回復しそうだし、特に銀泉台は紅葉のピークで、ナキウサギにも会えるかもしれないのだ。そこで宿主に聞いてみると、銀泉台は周りを山に囲まれているので大丈夫だろう、という。その言葉を信じて、小雨降りしきる中、10時過ぎに出発した。とはいえ、これから天気が回復してくるので焦ることはない、と思い、ひとまず近くの大函に立ち寄り、しばし観光した後、いざ銀泉台に向かった。

Ohbako
大函

  銀泉台へは、国道から分かれたダートロードを十数km進まなければならない、結構ハードな道のりである。しかし、意外にもここ数日で麓の黄葉が進んでいたので、それを見ながらのドライブもまんざらではなかった。ただ、進むにつれて風が強まり、銀泉台まで後数十mに迫った最後のカーブを曲がろうとすると、ものすごい突風が吹いていて、カーブの入口にいるにもかかわらず、車体が大きく揺れ、転倒の恐怖を覚えた。そのため、いったん下って紅葉の綺麗な場所で待機し、天候の回復を待つことにした。

  しかし、いくら待っても天候はなかなか回復しなかった。これは、台風が思いのほか北に行ったため、吹き込み風の影響をもろに受けてしまったのである。結局3時間ほど待ったが回復しなかったので、ひとまず空腹を満たすため、風が弱まった隙に銀泉台ヒュッテに赴き、食事をしながらさらに回復を待った。が、天気は一向に回復せず、ついに諦めて層雲峡に引き返さざるを得なかった。

  こうして結果的には骨休みとなったが、丸4日の旅で2日も棒に振ったのかと思うと、残念でならない。そして、これを取り返すためには、明日、相当の覚悟が必要になってしまった。

Fall Color at Ginsendai
銀泉台の紅葉

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