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旅行記:北海道一人旅

10.欲張り強行軍 (1998/9/21:曇後晴

 麗しの紅葉

  2日目は、紅葉の景勝地として名高い大雪高原温泉と銀泉台を巡ることにした。というのも、翌日からは台風の影響で相当天気が悪くなりそうだったからだ。

  しかし、このルートはユースの「ツアー」に含まれないほど過酷であった。銀泉台から高原温泉まで歩くコースはあっても、逆は体力的にも時間的にも難コースらしいのだ。しかし銀泉台発では、高原温泉の有名な「沼めぐりコース」に入れなくなってしまう(午後1時以降は入山不可)ので、受け入れがたかった。そこで私は、行きのタクシーだけ他の人と同一行動とし、後はお得意の単独行動に出たわけである。

  朝6時半に出立した時には霧雨が降っていたが、道中では、時間が経つにつれて次第に青空が覗くようになっていた。そして7時過ぎに高原温泉に到着すると、さっそく山々の紅葉が目に入ってきた。

  ところで、沼めぐりコースは有名なヒグマの生息地帯であり、休日以外は全てのコースを周ることができない(休日は観光客も多く、監視のボランティアもいるので可能)。そのため、コースの案内板には「○月○日 足跡発見」などという表示がいくつもあり、今回もご多分に漏れず、途中の緑沼までしか入れないという。全体の4分の1しか行けないのは残念で仕方がない…

  しかし、いざ中に入ってみると、時々晴れ間も見られ、紅葉(というよりは黄葉か?)も美しく見えた。40分ほど歩くと土俵沼・バショウ沼・滝見沼・緑沼の4つの沼が現れ、どこも独特の表情を見せ、紅葉とのコントラストがたまらない。さすがに大雪山有数の紅葉の美しさを誇るだけのことはある。

Dohyo Pond
土俵沼

Basho Pond
バショウ沼

  こうして行き止まりの緑沼に到着したが、30分ほど佇んでいると、おばさん2人組が「ここは一度来たら毎年来たくなるねぇ」などと話していた。それも納得の美しさであったが、コースを一周した人の話では、奥の方はさらに素晴らしい景観とのこと。今回はヒグマにその景色を譲るが、いつの日か、年に数回しかないチャンスをものにしたいものである。

Falls Pond
滝見沼

Green Pond
緑沼

 嵐の縦走

  その後は、先に来た道をゆっくりと引き返し、三脚を持った人たちと幾度もすれ違いながら無事帰還した。そして、30分ほど休息したら、いよいよ縦走して銀泉台に向かう。約15km、アップダウンの激しい7時間半の道のりだ。

  まずは緑岳に登るが、いきなりの急登に体力を奪われ、しかもまもなく霧がかかり始めた。なにやら嫌な予感がし始めたが、そんな時、突然岩場で複数の人が写真撮影をしていた。恐る恐る近づいてみると、なんと、氷河時代の生き残りと言われるナキウサギではないか!昨年、東雲湖畔でタッチの差で見逃していただけに、思わぬ対面に感激もひとしおだ。

  周りは無言でシャッターが押していたので、私も写真を撮ることにしたが、なにせ体長20cm未満なので、ズームのない使い捨てカメラでは姿を捕えきれない。この時ほど高級なカメラを持っていれば…と思ったことはなかったが、姿を見られるだけでも珍しいことなので、しばらくかわいらしい様子を拝見した後、再び歩を進めた。

  だが、それからはさらに突風も吹き出して、過酷きわまりない事態となった。景色の「け」の字もなくなり、霧と突風の中で、いつの間にかバッグや髪の毛もびしょ濡れになっていた。おまけに山頂付近は吹きさらしの急な岩場になっていて、はいつくばるように進んでも、ちょっと油断すると飛ばされそうになるほどだ。それでも、道中では「キッ」というナキウサギかシマリスの声があちこちで聞こえていたので、勝手に「頑張れ」と声援を送っているものと解釈して、それを励みに、風と闘いながら進んでいった。

 下山の絶景

  こうして緑岳には2時間ほどで到達したものの、山頂からは何も見えず、風も半端ではなかった。そこで急いで腹ごしらえを済ませ、シマリスを見届けたら、まもなく北の赤岳方面に向かった。

  この頃にはもはや誰とも会うこともなくなり、大げさに言えば死も覚悟した(それだけすごい風だったということ)。しばらく稜線を歩き、やがて赤岳に達すると、ようやく人の姿を発見。これで生きて帰れそうだと安堵し、岩に隠れて残りの弁当を食べた。

  すると、急に風に乗って雲の切れ間が見られるようになった。山の天気は変わりやすいというが、瞬く間に霧が晴れて、先ほどまでの霧が嘘のようなパノラマが広がったのだ。それからの銀泉台までの下りは、目の前に稜線を見渡しながら、紅葉が足下に広がるという絶景で、快適そのものであった。しかも山頂付近では岩が転々とする不思議な景色に紅葉が見られ(この辺りは背の低い植物の紅葉が多い)、途中の駒草平から下では木々の黄葉が斜面に広がっていた。こうして景色を堪能しながら、予定よりかなり早く下山したのであった。

View of Red Mountain
赤岳山頂付近

  下山後は登山者名簿に名前を記入するが、ここで名簿管理していた学生2人は、銀泉台から高原温泉まで縦走する予定だったものの、あまりの突風で断念したという(そう言えば、高原温泉を発つ時にその旨聞いていたが、彼らは私が逆走してきたと話したら「強ぇ」と言っていた)。それから、しばらく山小屋で休息した後、時間があったのでさらに南下して、紅葉のビューポイントに向かった。たどり着いた所では、今まで上ないし横から見ていた光景が下から拝見でき、また違った美しさを見せてくれていた(観光客も多かったが)。

Ginsen
銀泉台

  それから、1日1往復しかないバスに乗車し、途中夢心地になりながらも無事帰還した。帰ってくると、同室の人から「よく(あの気象条件の中)帰ってきたなぁ」と言われるほどであった(この人は旭岳に登って辛い目に遭っていたらしい)。そんな頑張った自分にたまには褒美をあげようと、すぐさま近くのホテルの巨大温泉に出向き、ジャグジーやら打たせ湯を堪能してリフレッシュしたのであった。

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