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旅行記:北海道一人旅

序.私と一人旅

 旅とは何か

  「旅」についてはこれまで様々に語られているが、今回のエピソードに入る前に、話のきっかけとして、学部時代お世話になった加藤哲郎教授の著書『社会と国家』(岩波書店)から旅に関する部分を引用してみよう。

  日本語の「旅」という言葉は、中国語起源です。多人数が外で祭祀を行うさい氏族の旗をかかげて出行することを意味し、本来の居所を去り客人として他所へ身を寄せる意味で、用いられるようになりました。

  英語で旅を意味する「トラベル(travel)」の語源は、「産みの苦しみを味わう、苦労する、骨折る」の意味をもつ「トラバイル(travail)」です。英語には、長期の苦労しての空間的移動を意味する「トラベル」の他に、短期の気軽な旅としての「トリップ(trip)」や、必ずしも目的をもたない陸の長旅で日記・日録をも意味する「ジャーニー(journey)」、海の長旅「ボヤージ(voyage)」などの言葉もあります。さらに観光周遊旅行を意味する「ツアー (tour)」があり、歴史的には、トラベルが交通の発達でジャーニー・ボヤージになり、ツアーの出現で旅が本格的に大衆化・ビジネス化し、自動車や電車での気軽なトリップも可能になりました。

  この文脈で言えば、今回の「旅」は、日本人お得意の「ツアー」を極力排し、「ジャーニー」を目指したものである(が結果的には「トリップ」なのかもしれない)。

 旅の構想

  今回の構想自体は、既に5月初め、就職活動に目処のついた頃から(密かに)考えていた。特に何か目的があったわけではないが、日常生活から解放され、自分のことを誰も知らない世界に身を置いてみたい、という漠然とした思いがあったのは確かだ。

  加えて、都会の喧騒からしばし離れ、今までに見たこともないような大自然に触れたい、と考えてもいたので、この時点で、自分の中では北海道に行こうと決心した。「北海道」というと、これまで行ったことはなかったが、日本離れしたスケールの自然が残っており、死ね前に一度行ってみたいと思っていた所であった。とりわけ道東のような大自然の宝庫は、ぜひ時間をかけて観てみたいと思っていた。

  そこで5月から6月にかけては、時間に余裕のある時に、道東を中心としたプランを、ああでもないこうでもないと考えては楽しんでいた。

  当初この旅は、就職活動が終わり次第、お忍び的に行ってしまおうと思っていた。しかしながら、この時期には毎週火曜日にプロジェクト科目があったので、これを休まないようにすると6日間しか観光できなくなってしまう。だが、北海道で自然を満喫しようと思えば、6日はあまりに短い。長期休暇の取れる夏休みにしようかとも考えたが、そうなると旬の季節ということで、人でごった返すことは目に見えており、これでは満喫できそうもない…

  どうしたものかとしばらく悩んだが、苦肉の策として、プロジェクト科目の終了する翌日の7月9日より、3連休&夏休み直前の18日まで、正味10日間旅行することとし、切符の手配を試みた。この時既に1ヵ月前を過ぎていたので心配だったが、運良く往復の切符とも手に入ったので、この日程で確定したのであった。

 日程は決めずに

  ところで、今回は敢えて途中の日程は事前に決めず、宿の手配も含めてその場その場で対処することにした。これには若干不安があったが、日程を確定してしまうと、どうしてもそれを消化することが目的化してしまうし、現地で知り得たことも柔軟に対応できなくなってしまう。

  それに、北海道の広大さからすると、天候次第では移動がままならなかったり、事実上「通過」せざるを得ないことも考えられる。まして今回は、本数の少ない列車やバスが移動手段であるから、時には何時間も待たなければならないと覚悟していた。

  そこで、結局東京-北海道間往復の予定だけ確定し、後は前日か当日に日程を練り、宿も夏休み直前の時期だからどうにかなるだろう、と楽観的に考えることにした。

  なお、今回一人旅という形態(?)を採ったのは、単に連れがいなかったということもあるが、それ以上に、誰にも束縛されず、自由気ままに旅をしたいという思いがあった。どうも私は一人でも寂しいと思うことはほとんどなく、むしろ他人と一緒だと何かと(目に見えないところで)気を遣ってうんざりする方なので、一人旅が性に合っているようである。

  また一人旅というと、実は小学校6年生の時に2週間かけて九州(+α)を周ったことがあるが、この時は宿も日程も事前に確定し、様々な所を駆け巡ったものであった。その意味では、今回は場所・行程決定方法とも対の関係になっており、前回の試みを受けた新たなる挑戦とも言えなくはないだろう。

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