検索 Google
五輪館
Back|Next
旅巧館旅行記>日本>北海道

旅行記:北海道一人旅

7.旅は道づれ (1997/7/16-17:曇晴

 ナキウサギとの相性

  こうして思いのほか早く然別湖に到着したが、宿の確保が懸案事項であったので、老夫婦に感謝の意を伝えたら、さっそく空きがあるか確認することにした。

  2軒のうち、まずは若干安めの設定となっているホテル福原をあたってみる。すると、空きはあるが1人16,000円からだと言う。ある程度高いのは承知していたが、まさかこれほどとは思っていなかった。これでは普通の所で2泊できる値段だ!

  傷心し、宿泊断念も頭をよぎったが、その時、私の気持ちを察してか、従業員の方が「いくらなら大丈夫ですか」と聞いてきた。そこで私は、1万円程度なら…と答えてみたが、幸いそれで応じてくれたのである。こんな幸運もあるのだと信じられない気分だったが、ともかくこれで一安心だ。そして、ついでに翌日の早朝カヌーも申し込み、大きい荷物も預けて、ついに第2の秘湖・東雲湖を目指すこととなった。

Lake Shikaribetsu
然別湖

  東雲湖に向かうには、しばらく然別湖畔に沿って歩き、ホテルの対岸にある天望山(別名「唇山」)付近まで歩く必要があった。しばし森の中を進むが、コバルトブルーの湖面が鮮やかに見えて気持ち良い。時折湖畔に出たりしながら1時間あまり歩くと、今度は湖から離れ、かなり鬱蒼とした森の中をしばらく進んでいった。

  やがて岩石が一面に広がる岩場に出ると、その先では、向こう側から来た人が、物音をたてないようにして私を手招きしているではないか。私も音をたてないように注意して近づき、その人のところにたどり着いたが、指差した先を私が見ようとした瞬間、目的のものは隠れてしまった。ここは氷河時代の生き残りと言われているナキウサギの生息地だったのだ。

  悔しい思いを抱きつつ、注意深く観察しながら進むと、先ではまた別の人が盛んにシャッターを押している。そこで私も近づいたが、その矢先に、またしてもナキウサギが隠れてしまった。何とも運がないというか、相性が悪いようだが、気がつくと左手には東雲湖が静かに佇んでいた。しかし湖面が良く見えなかったので、腰まであるクマザサを掻き分け、湖畔まで下りていくと、水中には水草が生い茂り、何とも不思議な雰囲気を醸し出していた。やはり近くに寄ってこそ良さはわかるものである。

Lake Shinonome
東雲湖の眺め

  その後、岩場に戻って休憩し、ナキウサギを見ようとしたものの、リスを見られるのがやっとであった。そこでやむなく断念し、眺望が良いという天望山に登ることにした。

  途中、かなり急な登りもあって苦戦したが、やっとの思いで到達した頂上からは然別湖が一望でき、逆側の十勝平野のパノラマも素晴らしい。頂上からの下りでは急に鹿が走り出して驚くシーンもあったが、私も相当疲れていたため、途中の白雲山登りは諦めて湖畔沿いの帰路についたのであった。

  ホテルに着く頃には雲行きが怪しくなり、まもなく雷雨が降り出したが、幸いにも私は被害を受けずに帰着。夕食時には霧もかかり、湖の眺めが台無しであったが、とりあえず明日の早朝カヌーができることを祈って、早めに就寝した。

View of Lake Shikaribetsu
天望山からの眺め

 9日目で一周

  9日目ともなると相当疲れがたまっていたが、この日も早朝カヌーのため朝5時半起きとなった。辺りを見渡すと、山越しに霧が見えるものの、湖だけは晴れており、昨日の運がまだ残っているようであった。

  そして6時に集合し、湖畔へ向かったが、私を含め他の方もカヌー初挑戦だったので、まずはパドルの操作を簡単に教わり、ライフジャケットを装着して、いざカヌーに乗り込む。使用するのはカナディアンタイプで、2人で操作するのが基本であるため、私の所にはインストラクターの方が1名同行してくれた。そのため他の2隻より進むのが早かったが、その分景色を眺めながら進むことができた。途中、対岸に上陸してのコーヒーブレイクもあるなど、1時間半のカヌー体験は有意義なものであった。

  その後、急いでバイキング朝食を済ませ、8時過ぎのバスに駆け込んだ。然別湖を過ぎると深い霧の中を進んだが、やがて霧も晴れ、1時間ほどで新得駅に到着。ここからは鉄道で札幌方面に向かい、一路支笏湖を目指す。

  札幌行特急はあいにく満席だったのでデッキ部で過ごしたが、1時間半かかってようやく出発地点・千歳までやって来た。9日目にして、ついに一周して戻ってきたわけである。ここからさらにバスで移動すること40分、予定通り支笏湖畔に到着し、まずは支笏湖ビジターセンターに寄って周辺の情報を入手したが、その後は景観を堪能する前に、最後の宿探しを行なうことにした。

Lake Shikotsu
支笏湖

  宿の候補として真っ先に挙がっていたのが、公共宿で安く、自然に囲まれた 「休暇村支笏湖畔」であった。しかし重い荷物を背負ってたどり着くと、既に満室とのことだったので、やむなくバス停周辺の温泉街に引き返し、近くにあった支笏湖北海ホテルを訪ねてみた。するとOKで、昼にもかかわらずチェックインを許してくれたので、さっそく出かける準備を済ませ、ユースホステルで自転車を借り、すぐさま駆け出していった。

 秘湖の後

  目指す先はもちろん、最後の秘湖・オコタンペ湖であった。片道17kmの道のりで、最初の9kmほどは支笏湖畔に沿って走るので快適に飛ばせたが、ほどなくして長い登り坂となってしまった。決して急ではないが延々と登りが続くため、曇り空でも汗が出るほどで、しまいには歩き出す始末であった。

  それでも何とか走り続け、恵庭岳の周囲を回ってようやくオコタンペ湖展望台にやって来た。ここからは湖の姿が一望でき、ツアー客もここで一目見て引き返していたが、これでは真の良さがわからないだろうと察し、湖面まで降りることにした。

  入口は展望台から南に下ったオコタンペ橋の袂にあるが、踏跡もはっきりしないような険しいアップダウンを歩きこなす必要があった。この時点で午後3時になっていたので、いささか不安ではあったが、意を決して足場の悪い急坂を登り、顔まである草木を掻き分けて進んでいく。登り終わってからの下りも急であったが、思ったほど時間はかからず、念願の湖面に到達した。曇っていたのは残念だったが、一瞬陽が差した時の色の変化は素晴らしかった。

Lake Okotanpe
オコタンペ湖

  こうしてしばらく佇んでから引き返し、オコタンペ橋より帰路についたが、もう登りの辛さは味わいたくなかったので、さらに南下して支笏湖を一周しようと考えた。登りと違って、下りは自転車にとってはまさに天国で、とても快調に飛ばすことができる。ところが、下り終わった先が、なんと行き止まりになっているではないか。

  おそらく事故か何かで工事中となっていたのだが、坂を快適に下ってきただけに、私は途方に暮れ、心の中に登り坂の悪夢が蘇ろうとしていた。仕方なく近くにあったオコタン野営場に行ってみるものの、やはり湖畔を通ることはできず、先の坂を引き返すより手段はないという。しかも帰りの坂の方が急だと聞き、困り果ててしまった…

  とその時、私と同じく道を引き返す羽目になったワゴン車が現われた。中には家族連れがおり、これから洞爺湖を抜けてニセコまで向かう予定だったそうだが、私を哀れに思ったのか、自転車ともども乗せてくれることになった。諺で「旅は道連れ、世は情け」(旅をする時は道連れがあるのが心強く、同じように世の中を渡るには互いに情けを持って行くのが一番大切である、という意)などと言うが、昔の人はよく言ったものである。今回は偶然のハプニングとはいえ、助け合うことの大切さを改めて実感したような気がする。

  結局、車で支笏湖西端から東端まで引き返し、バス停のある支笏湖温泉界隈まで送ってもらって、無事帰還することができた。宿に帰ってからは、明日の「お楽しみ」を申し込み、ヒメマス料理と露天風呂(美肌効果があるらしい)で英気を養って、最終日に備えた。

Page Top
Copyright © gorinkan.org All Rights Reserved.