ところで、滝上を含めた紋別・上湧別・遠軽・丸瀬布・白滝を囲むルートは「オホーツク周遊200キロ・花回遊」と銘打っていることがわかった。旅の情報誌などには全く載っていなかったが、せっかくなので、ここはいったんオホーツク海に出て、遠軽まで「花回遊」ルートを辿ってみる。
そこでまず紋別に向かうが、しばらくすると田舎の香水が匂ってきた。しかしSFCで鍛えられた(麻痺した)嗅覚ではビクともせず、むしろ睡魔との闘いが続き、1時間程してオホーツク海にやって来た。
紋別では約1時間の待ち時間があったので、名物の蟹(サラダ)を食らい、続いて鉄道のある遠軽方面を目指す。途中、じゃがいもの花畑や白樺林などが広がり、雄大な大地を鑑賞しながら進むのはなかなかの贅沢である。
上湧別のチューリップ公園を過ぎ、遠軽に到着すると、次の列車まで1時間半ほど余裕があったので、近くにある瞰望岩とえんがる公園を散策してみることにした。断崖絶壁の瞰望岩を登るには急で長い階段を登る必要があるが、それだけに眺望は素晴らしいものであった。

瞰望岩
こうして次なる目的地、秘境・知床を目指して移動することとなった。しかしながら、この時点で既に夕方であったため、 とうてい今日中に知床までは到達できない。すなわち、どこまで行くかが問題となった。
列車は北見で一度乗り換え、7時半には網走までたどり着いたが、知床への玄関口・斜里へ行くとなると9時前到着になってしまう。お腹も空いていたので迷ったが、やはり朝早いより夜遅い方が個人的には楽なので、粘って斜里まで向かうことにした。
1両編成の車内では中高校生が賑やかで困ったが、到着後は斜里第一ホテルという安めのビジネスホテルに駆け込み、近くにあったコンビニで弁当も入手して、何とか急場をしのぐことができた。
3日目ともなると、朝早いのにも徐々に慣れてきていた。まして今日は「最後の秘境」と言われる知床を目指すのだから、眠気など吹っ飛んでしまうほどで、8時前発のバスもへっちゃらであった。
知床は滝上と並ぶ今回の2大目的地で、大自然がふんだんに残された貴重な場所として、また日本版ナショナル・トラスト運動の先駆けとして、個人的には必ず訪れるつもりでいた所である。「知床」という言葉自体がアイヌ語の「地の果て」を意味する「シレトク」から付けられたように、この半島は険しい断崖が続き、中程から先には人が自由に入り込めないほどの秘境の地だ。
この壮大な自然を知る格好の情報基地として設けられているのが「知床自然センター」だが、私としても知床は時間をかけて堪能したかったので、手始めにこのセンターに立ち寄ることにした。
バスはしばらく走るとオホーツク海のすぐ横を通るようになり、やがて最初の観光スポット、オシンコシンの滝にたどり着く。ここは車内から見るだけだったが、既にツアー客でごった返している状態で、観光バスの行動の早さに驚くばかりであった。

フレペの滝 (乙女の涙)
さらに走り続けて20分、華やかな温泉街・ウトロを通り過ぎると、ほどなくして自然センターに到着した。ここには主要ポイントの自然情報・交通情報や、知床に関する写真・資料等があるが、最大の目玉は12m×20mのダイナビジョン「四季知床」で美しい知床の自然や野生動物の活動などを拝見できること。そこでさっそく(割引券を使って)見物すると、約20分の上映で、内容自体は思ったほど大したことなかった気もするが、知床をお手軽に知るには適当であった。
その後、次のバスまで40分の猶予があったので、片道1kmの遊歩道を歩いてフレペの滝(乙女の涙)まで行ってみる。途中鹿とのご対面もあったが、林と草原の中を抜けると、断崖の上にテラスが設けられており、そこからはフレペの滝はもちろん、険しい海岸景観や鴎などの海鳥類の観察も楽しめ、逆側の知床連山も美しい。しかも金曜の午前中であるせいか訪れる人も少なく、何か得した気分であった。
自然センターまで引き返し、名物のソフトクリームをいただいた後は、バスでいったんウトロに戻る。実は今回、是非とも知床岬までの観光船に乗ってみたかったのだが、天候不順の際は欠航する可能性もあるので、天候の良いうちに体験しておこうと考えていたのだ。幸運にもこの日は好天に恵まれ、波も非常に穏やかであったので、絶好の航海日和であった。
ウトロでは観光船出港まで時間があったので、土産を買ったりしたが、早めにチケットを入手しておこうと思い立ち、券売所に向かう。すると途中の「カムイワッカ」という店で、自分たちのクルーザーで行ってみないか、と声をかけられた。曰く、観光船は大型なので遠くを周るだけだが、クルーザーでは名所の滝や湾の間近を巡っていくので結局得だ、と。2,000円高いのでやや考えたが、せっかくの機会なのでその言葉を信じることとし、申し込みを行なった。
こうして少し早めの昼食にありついたら、クルーザーは昼過ぎに、観光船とほぼ同時刻に出発した。ウトロ港を出てしばらくすると、先ほど陸から見ていたフレペの滝(乙女の涙)にたどり着く。陸上より海上から見る方が美しいと思いつつ、断崖絶壁の中にある湯の華の滝(男の涙)や象岩を過ぎ、知床連山を見ながらしばらく進んでいった。

カムイワッカの滝

象岩

湯の華の滝 (男の涙)

鮫岩
その先のカムイワッカの滝を過ぎると、しばらく波のある海域となり、時々海水がかかって辛かったが、岬に近くなると蛸岩やカシュニの滝、観音岩、メガネ岩などと見所が続き、ついに本当の「地の果て」知床岬付近に到達した。あいにく国後島は霧で見えず、波も高くなっていたが、ここまで来ただけでも満足であった。

カシュニの滝

蛸岩

知床連山を望む

知床岬
それにしても今回驚いたのは、海の色がエメラルドグリーンだったことである。おそらく海水に硫黄分が多く含まれているためだろうが、途中で寄った小さな湾などは、エーゲ海を思わせる美しさ(船長談)で、思わず魅了されてしまった。

美しい色に見惚れる

小さな湾に入っていく
結局大満足のうちに、3時間あまりのクルーズは無事終了した。宿も観光案内所に斡旋してもらった民宿に決め、鍋や蟹などの夕食をご馳走になった。壁が薄いのがやや不満であったものの、磯の香りの中で(それなりに)心地よく眠りについたのであった。