出発を間近に控えた7月初め、東京は記録的な猛暑に見舞われていた。この頃から天気予報で北海道の気候を気にしていたが、この時期でも最高気温は20℃前後と、関東地方より15℃近く涼しかったので、早く行きたい、と思わずにはいられなかった。
とは言え、藤沢市との共同プロジェクトがリニューアルされたばかりで仕事がたくさんあったため、やむなく出発当日の午前3時過ぎまで学校に残り、仕事を片付ける羽目となった。また、プロジェクトメンバーに遺言を残し帰宅した後も、旅行用の荷造りをしなければならず、しかも羽田空港発が10時前と比較的早かったので、結局徹夜することとなってしまった。
そうこうするうちに湘南台を出発し、横浜駅からはバスで羽田空港に向かう(バスは若干渋滞に巻き込まれたが、途中ベイブリッジを通るなど、料金・手間・時間も合わせて「お得」であった)。そして空港には出発1時間半前に着いたので、搭乗手続き等を済ませても時間があまったが、その間は当日のプランを考えて時間を潰した。
実は、初日に関しては大きく3つのルートを考えていた。1つは新千歳空港から程近い支笏湖を周るコース、2つ目は今が旬の富良野・美瑛を巡るコース、最後は『共生の大地』(岩波新書)で紹介されていた童話村・滝上を観るコースである。
支笏湖は修士1年のK原氏お薦めのスポットであり、初日は午後からしか動けないことを考えると妥当なところであった。富良野・美瑛は言わずと知れた人気の観光地であり、ちょうど新千歳空港駅から臨時特急が出ているので、出だしには最適のように思われる。他方、滝上はあまり有名ではなく、移動時間がかかるのも難点だったが、とにかく行ってみたいところであった。
これらの選択に関しては、眠気も手伝って、飛行機離陸後も決めかねていたが、外の景色を眺めているうちに、せっかく来たのだからまず行きたいところに行こう!と考えるようになり、滝上を目指すことに決した。
やがて北海道の大地が視界に広がり、定刻通り1時間半ほどで到着。空港にはJRの駅があるので、事前に購入しておいた周遊券(道内のJR線が特急自由席まで10日間乗り放題)を利用し、富良野行の臨時特急を横目に見ながら、まずは札幌に向かった。
この辺りはさすがに経済活動も活発で、私が抱く北海道のイメージとはかけ離れていたが、その後旭川行の特急に乗り換えると、たちまち広大な田園風景が出現してきた。さすがにスケールが違っていて、ここで初めて北海道に来たのだと実感する。そして、旭川からは2両の列車に乗って東に向かい、大雪山層雲峡の入口として有名な上川で下車した。
ここからは紋別行の高速バスに乗り込み、北上して滝上を目指す。しばらく鉄道と並行して快適な道を走り、深い森を抜けると、徐々に酪農地帯と化し、やがて所々に「ようこそ滝上町へ」などと書かれた看板が目につくようになった。どうもイメージとは違うなと思いつつ、バスはしばらく走り続けて40分、ようやく町が現われ、滝上に到着した。
さて、この時点で既に午後5時半ということもあり、 この日の観光は諦めて宿を探す。ものの本によると、ここには町営の「ホテル渓谷」があるそうなので、町興しに貢献すべく探してみるが、土地勘がなくなかなか見つからない。途中で案内板を見つけたものの、かなり遠くまで歩く必要があるらしい…そんなに遠くないと自分に言い聞かせて歩き、途中滝やメルヘンチックな建物を観ながら、やっとの思いでホテルにたどり着いたのであった(アポなしだったので心配したが、どうにか泊まることができた)。
翌日は疲れもあって朝の8時頃起床したが、既にほとんどの人が食事を済ませていた。旅の朝は早いものだと思いつつ、小綺麗な朝食を食べた後、9時過ぎにチェックアウト。幸い晴天にも恵まれ、絶好の観光日和であった。
この滝上を訪れた目的は、繰り返すまでもなく、『共生の大地』で「童話村」滝上の町興しが取り上げられていたことに興味を持ち、その実態を拝見したいと思ったからである。
そこで、まずは昨日入手したパンフレットにある渓谷「錦仙峡」(渚滑川)を辿ってみる。渓谷沿いの遊歩道はそれほど清掃されておらず、人があまり通っていない様ではあるが、豪快な滝と貴重な高山植物が一緒に見られるので悪くない。洛陽の滝を過ぎると、しばらく流れが弱くなって虫が気になり出すが、白亜の滝まで来ると、急に開けて色とりどりの植物も良く見える。この滝は発電所から出ているようだが、これがまた洒落た造りで、とても発電所とは思えない。そして、そのすぐ先には蛟竜の滝と虹の橋(白馬の滝)があるが、これもまた絶景である。

虹の橋と蛟竜の滝

白亜の滝
渓谷に続いては、最大の観光名所、滝上公園に向かう。ここは一面芝桜に覆われており、時期が時期ならピンクの絨毯を敷き詰めたようになるらしいが、もうピークから1ヵ月が経過していることもあって、日陰などにほんの少ししか咲き残っていなかった。
それでも、丘の上まで上がると滝上周辺 が一望でき、童話村らしい変わった建物も一目瞭然である。また、他にもチューリップやツツジの花などが彩りを添えており、ぜひ旬の時期(5月中旬~6月上旬)に一度訪れたいものである。
町に降りると、道路沿いの至るところに花が置かれていて、心地良い香りを醸し出している。ホテル渓谷の先には「香りの里ハーブガーデン」があり、最近できた道の駅が「香りの里たきのうえ」と名付けられているように、この町は花の香りを大切にしており、まるで町全体がさわやかな花の香りに包まれているようである。

街中の花
その後、虹の橋などを改めて散策し(橋の上に行ったら滝が止まるというご愛敬もあった)、昼過ぎに第一の目的地、滝上を去った。